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Twitter創業者ジャック・ドーシーが「Web3.0」に噛みついた理由 界隈で今何が起きているのか(1/4 ページ)

» 2021年12月28日 11時00分 公開
[星暁雄ITmedia]

 「Web3.0」、あるいは「Web3」のムーブメントにTwitter創業者のジャック・ドーシー氏が異議を唱え、ベンチャー投資家らとTwitter上で論争が起きた。この記事では、この論争の背景を読み解いていく。

 最初に、誤解を招きやすい点に触れておく。ドーシー氏はWeb3.0を批判したが、Web3.0の基本的な構成要素であるブロックチェーンや暗号通貨を否定したわけではない。ドーシー氏は熱心なビットコイン支持者なのである。

 ビットコインの仕組みを高く評価し、ビットコイン以外の全ての暗号通貨を批判的・懐疑的に見る立場を「ビットコイン・マキシマリスト」と呼ぶのだが、ドーシー氏の発言はビットコイン・マキシマリストの思想と親和性があるものと受け止められる。

大量の資金が流れ込む「Web3.0」はイーサリアムとともに登場

 まずWeb3.0について概観しよう。

 Web3.0は、今やハイテク投資家にとって重要キーワードだ。Web3.0というキーワードや、関連するクリプト(暗号通貨)、DeFi(分散型金融)、GameFi(ブロックチェーンゲーム)、NFT(非代替トークン)といったキーワードのもと、大量の資金がWeb3.0エコシステムに流入している。

 ベンチャーキャピタルの米Sequoia Capitalは、Apple、Google、Airbnb、Stripeなどそうそうたるハイテク企業の創設段階に投資してきた名門だ。そのSequoiaは2021年に21件のクリプト投資を実施し、新規投資総額の25%に相当する資金をこの分野に投入した。別の数字も見てみよう。「Defi Llama」というDeFi向け統計サービスによれば、DeFi分野に流入する資金は日本円換算で29兆7000億円相当の規模に膨れ上がっている。

DeFi分野に流入する資金は日本円換算で29兆7000億円相当の規模に(Defi Llamaより)

 Web3.0、あるいはWeb3という用語は、Webの発明者ティム・バーナーズ=リーへの2006年のインタビューの中で「Web2.0の次」といったニュアンスで登場している。2014年には、暗号通貨イーサリアムの開発プロジェクトでCTO(最高技術責任者)を務めていたギャビン・ウッドが、プライバシーとディセントラライゼーション(Decentralization、非中央集権/分散/分権化)を追求した「ポスト・スノーデン時代」のWebとして「Web3」の概念を提唱した。ちなみにイーサリアムの「DApps」(分散アプリケーション)を作る開発者らは、イーサリアムを扱うためのJavaScriptライブラリ“web3.js”を使っていたので「Web3」という文字列には親しんでいる。

 ギャビン・ウッドの提唱から7年ほどの間に、「Web3.0」はブロックチェーンと結びついた分散アプリケーション、すなわちDAppsのエコシステムとほぼ同じ範囲を指す言葉となった。今ではベンチャー投資家にとってもWeb3.0は要注目の分野となっている。

Web3.0の実体は「DApps=分散アプリケーション」

 いわゆるWeb3.0の実体は、ざっくり言うとDApps、つまりブロックチェーンを活用した分散アプリケーションだと思っていい。少なくとも今のところは。

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