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Twitter創業者ジャック・ドーシーが「Web3.0」に噛みついた理由 界隈で今何が起きているのか(3/4 ページ)

» 2021年12月28日 11時00分 公開
[星暁雄ITmedia]

 この発言を“超訳”するなら、イーサリアムの支持者に向かって「アプリケーション開発をうんぬんする前に、アプリケーションの基盤をなんとかしろ。劣っているイーサリアムではなく、優れているビットコインにリソースを振り向けろ」といったところだろう。

 今回の論点は「暗号通貨やブロックチェーンを認めるかどうか」ではない。ビットコイン「だけ」を認めるのか、ビットコイン以外のブロックチェーンや暗号通貨、とりわけイーサリアムを認めるかどうか、なのである。

 筆者はドーシー氏の批判にはもっともな部分もあると考える。ドーシーらが推進するビットコイン関連プロジェクトの価値を、VCや、大勢の開発者たちは過小評価している可能性がある。

 そしてイーサリアム周辺のWeb3.0関連企業やプロジェクトが過大評価され、バブルとなっている可能性もある。資産をWeb3.0関連プロジェクトに預けたユーザーがバブル崩壊に巻き込まれ、資産を失う恐れもある。

 その一方で次の疑問も湧く。ビットコイン以外のブロックチェーン技術がそれほど劣っているのなら、なぜ大勢の開発者がイーサリアムやイーサリアム互換チェーンのDApps開発に参加し、多くのユーザーが集まり、多くの投資家が集まっているのだろうか。

 お金や人が集まる理由は、前述したような魅力があるからだ。ユーザーはデジタル資産の所有権を秘密鍵という確実な形で手元に置くことができる。もっとも、これはビットコインでも事情は同じだ。イーサリアムならではの魅力は、前述した「共有の資金プール」である。

Web3.0の注目すべき性質——みんなのお金を運用できる

 Web3.0の性質は、ブロックチェーンの非中央集権的な性質に由来する。その特徴を、筆者は以前、下記のツイートのようにまとめたことがある。匿名の筆者によるBlog記事「なぜWeb3.0は重要なのか、そしてなぜあなたはそれを知るべきなのか」を要約したものだ。

 Web2.0、つまり主流のWebサービスでは、ユーザーのデータが、ユーザーの預かり知らない間に広告主のために活用されたり、またハッキングによりユーザーの情報が漏えいしたりする出来事が相次いだ。これらに不満を持つ人にとって、ブロックチェーンに基づくサービスは解決を提供するものだ。

 ユーザーがデータやデジタル資産の所有権を持つこと、これがWeb3.0の原則である。だからこそ、ドーシー氏はVCの介入によりその原則が破られる恐れがあると警告したわけだ。

 ただ、Web3.0の主戦場はイーサリアムだ。「イーサリアムにはできて、ビットコインにはできないこと」は、資金プールの自律的な管理だ(関連記事:「イーサリアム2.0の足音 あなたが知らないブロックチェーン最前線」)。イーサリアムのブロックチェーン上で動くプログラム(スマートコントラクト)は、ユーザーが託したデジタル資産を自律的・自動的に管理・運用できる。

 この特性を応用した金融サービスは、流動性マイニング(Liquidity Mining)、AMM(Automated Market Maker)、イールドファーミング(yield farming)などと呼ばれている。ユーザーはDEX(分散型交換所、交換により手数料を得る)やレンディング(貸し出しで利息を取る)といったDeFiサービスの「流動性プール」に資産を投入して流動性を提供し、引き換えに報酬を得られる。資金のプールを作れるイーサリアムの性質がDAppsの台頭をもたらし、DeFiブームを生み、Web3.0のムーブメントを生んだ。

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