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ソーシャルメディアはパンデミックにとって毒か薬か 若者の4割がコロナ関連情報をシェアする姿勢の是非ウィズコロナ時代のテクノロジー(1/2 ページ)

» 2022年01月11日 08時00分 公開
[小林啓倫ITmedia]

 今回のパンデミックでは、さまざまなテクノロジーがプラスとマイナスの両面を見せることとなった。中でも、ソーシャルメディアはマイナスの側面も見せることが多かったといえる。FacebookやTwitter、YouTubeといった主要ソーシャルメディア上では、新型コロナウイルスに関係する真偽不明の情報や明確なデマ、意図的なフェイクニュースが拡散し、中には大きな騒動にまで発展したケースもある。

 最近ではワクチンに関するデマが出回っており、ワクチン接種率を引き下げてしまうことが懸念されている。パンデミックに対する最大の武器となるはずのワクチン接種がデマによって妨害されるようであれば、その拡散に手を貸してしまうソーシャルメディアは、有害な側面を持つと指摘せざるを得ないだろう。

 しかし2011年3月に東日本大震災が発生した際、ソーシャルメディア、特にTwitterを介して発信・共有される情報は、さまざまな形で震災の影響を受けた人々の役に立った。家族や知人の安否確認に使われたり、帰宅困難者やそれを支援する人々、施設と情報共有が行われたり、被災した自治体の関係者から必要・不要な物資に関する情報が発信されたりといった例を覚えている方も多いだろう。

 もちろん当時もデマ拡散に対する懸念は存在していたが、一方で確かに価値も生まれていた。同様のケースは、コロナ禍では発生していないのだろうか。

新型コロナウイルスに関するタイムリーな情報発信

 この点について、米ブルッキングス研究所テクノロジー・イノベーション・センターの研究員であるジョン・ヴィラセナー氏が「COVIDに対応する上でTwitterが演じた重要な役割」(The vital role of Twitter in responding to Covid)と題された興味深い記事を投稿している。

 それによると、Twitterではデマやヘイトスピーチ、政治的な過激主義といった問題は抱えているものの、新型コロナ対応という点では「Twitterは最新の感染率や研究結果に関するタイムリーな情報を配信する上で、重要な役割を果たした」と結論付けている。

 実際に彼は、有益な情報がTwitter上で共有された事例をいくつか挙げている。例えば、米カリフォルニア大学サンフランシスコ校医学部のボブ・ワクター博士のTwitterアカウントでは、同校の付属病院に新型コロナウイルスとは関係なく入院・外来した無症状患者の陽性率がツイートされている。

 博士はこの数字を使って「サンフランシスコのレストランで、近くのテーブルに座っている誰かが無症状で新型コロナウイルスに感染している確率を推定している」と述べている

ワクター博士のツイート「サンフランシスコで新型コロナウイルスの症状がない人の12人に1人が新型コロナウイルスに感染していることを意味する」と解説している

 米スクリプス研究所の副社長であり、生物医療科学の研究も行う、エリック・トポル博士は、新型コロナウイルスに関する最新のデータや研究結果に関する情報を定期的に発信している。

 例えば12月29日には、トポル博士は「オミクロン株の生体内感染に関する新たな研究により、この変異体は病原性が低く、肺炎を誘発する可能性が低いことが確認された」とツイートしている。この話題は日本でも報じられるようになっているが、ニューヨークタイムズ紙で最初に取り上げられたのは、それから2日後の12月31日だった。

オミクロン株と肺炎の関係に関する研究成果をいち早く取り上げたトポル博士のツイート

 彼らのアカウントには、それぞれ数十万人単位のフォロワーがいる。そしてリツイートなどを通じて、これらの情報は数多くの人々の目に触れたことだろう。他にも多くの専門家たちが、マスメディアによって報じられるのを待つだけでなく、ソーシャルメディアを通じて自ら情報発信を行っている。

 日本でも山中伸弥博士が「山中伸弥による新型コロナウイルス情報発信」というWebサイトを立ち上げ、関連情報の精査と整理を行っていた。こうした専門家による分かりやすく、迅速な情報発信は、一般の人々が新型コロナウイルスを正しく理解し、適切な行動を取ることを促す可能性がある。

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