しかし、いくら専門家が科学的根拠に基づいた最新情報を発信しても、一般の人々は、不安を煽るようなフェイクニュースやデマの方を注目してしまうのではないだろうか? 多くの人々がそうした疑問を抱いているかもしれないが、必ずしもそうとは限らない可能性があることを、WHO(世界保健機関)が2021年12月に発表した報告書「ソーシャルメディアとCOVID-19(Social media & COVID-19)」が示している。
これは世界24カ国において、18歳〜40歳までの約2万3500人を対象に行われたアンケート調査で「2020年10月下旬から2021年1月上旬に収集したデータによって、Z世代とミレニアル世代がCOVID-19の情報をどこに求めているのかの他に、誰を信頼できる情報源として信頼しているのか、誤ったニュースに対する彼らの認識と行動、そして彼らの懸念事項について、重要な洞察が得られた」としている。
そうした洞察の一つが専門家による科学的な情報に対する態度なのだが、同報告書によれば、科学的コンテンツは「シェアする価値がある」と見なされているとのことだ
COVID-19に関係する情報について「どのような情報をソーシャルメディアに投稿する可能性があるか」の質問に対しては、男女ともに43.9%の回答者が「科学的なコンテンツ」と答えている。
これは「自分自身に関係のある情報」(36.7%)や「懸念すべき情報」(28.5%)を上回り、トップの回答となっている。あくまでアンケート結果であり、実際の行動を観察したものではないが、若い世代の多くが科学的な情報をソーシャルメディア上で共有する姿勢を示しているのだ。
共有するコンテンツの種類についても「記事」と答えたのは28.3%で、「動画」(24.1%)および「画像」(23.0%)と肩を並べている。文章ばかりの情報は固くて敬遠されると思われがちだが、実際には(シェアする価値があると感じてもらえればという前提付きだが)、拡散される可能は低くない可能性がある。
この調査は、前述の通り18歳〜40歳までという比較的若い人々を対象にしたものであり、それより上の年齢層も含めれば、別の結果が出てくるかもしれない。実際に米MITのTechnology Review誌では「高齢者ほどネットでデマを共有しやすい」とする研究結果を取り上げている。
高齢者がソーシャルメディアを活用するのは当たり前の世の中になってきており、こうした研究が正しいのであれば、パンデミック時におけるソーシャルメディアの危険性を無視することはできないだろう。
とはいえ、科学的な情報をリアルタイムに届けることに力を入れる専門家の存在と、その科学的な情報を積極的にソーシャルメディア上で拡散しようという若者世代の存在は、ソーシャルメディアがパンデミック対策において力を発揮する潜在力を秘めていることを意味する。
COVID-19が終息した後、改めてソーシャルメディアの果たした役割を検証し、対策を練ることが、次の危機に対する特効薬となるに違いない。
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