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カセットからフロッピー、そしてハードディスクを制御するSASI、SCSI、IDE、ATA、SATA――さまよえるストレージ用インタフェース標準を語る“PC”あるいは“Personal Computer”と呼ばれるもの、その変遷を辿る(2/5 ページ)

» 2022年01月12日 13時06分 公開
[大原雄介ITmedia]

フロッピーディスク時代の到来

 これはIBM PCでも状況は同じで、1981年に初代IBM PCことIBM 5150が発売されたとき、最小構成(16KB DRAM+キーボード。モニターは別)だと1265ドルだったが、FDDを使うためには220ドルのDisk-Drive Adapterと、1台570ドルのFDD Unitを追加する必要があった。

 48KB DRAM+キーボード+FDD 1台の構成だと2265ドルというバーゲンプライス(32KB DRAMの追加は325ドルだったから、単体で購入して組み合わせると2380ドルになる)ではあったが、1000ドルを余分に支払えるのは、FDDが必要なビジネスユーザーがほとんどだった。

 もっともカセットテープはランダムアクセス性や記録保持力などでFD(フロッピーディスク)には著しく劣るというのが正直なところであり、パッケージソフトウェアのマーケットが立ち上がるとカセットはいろいろ面倒(衝撃に弱く、厚みがあって重い)ということで、FDがカセットに代わってマイコン、PCの記録媒体の主役に躍り出るのは必然であった。

 この頃にはFDもだいぶ値段が下がっており(フロッピーディスクそのものはこれに先んじて値段が下落しており、ノーブランドなら10枚数百円とかで売っていたりした)、比較的入手が容易だった。

HDDはIBMから始まった

 これに比べると、HDDの普及にはもう少し時間が掛かった。

 「本家」PCで言えば、例えばIBM PC/XTは当初からオプションで10MB HDDを搭載可能だったが、この10MB HDDのお値段は当初1695ドル(さらにAdapter Cardが695ドル)だった。HDD無しで64KB DRAM+FDD×1の構成が1846ドル、256KB DRAM+FDD×1+10MB HDDの構成が4995ドルだった。要するにHDD+I/Fカードの値段が、それ以外の本体の値段と大差ない(むしろHDDの方が高い)有様だった。

 また昔話をすると、筆者が最初に買ったHDDは、やはりPC-9801用(というか、EPSONのPC-386M用)のSASIで、これも互換メーカーの製品だったが、1989年で20MBが10万円くらいしたと記憶している。1983年の10MBが2000ドルオーバーよりはだいぶ値段が下がっていたが、それでもまだまだ高価だった。ただ1990年に入ると、パーソナルユースはともかくビジネスユースでHDDは欠かせないものになり始めており、ここから急速に価格を下げて普及していく。

 さて、いつものようにここまでは枕でここからが本題。今回はこのHDDのインタフェースについて説明していきたい。

ハードディスク用インタフェースの歴史を辿る

 HDDそのものを開発したのはこれまたIBMで、1956年に発表されたIBM 350 RAMACである。Computer History Archives Projectが当時のIBMのコマーシャル動画をYouTubeで公開しているので、興味ある方はご覧いただくと良いだろう。

 このRAMACの開発に携わったアラン・シュガート氏は、その後世界最初のFDDであるIBM 3370(ちなみにDASD:Direct Access Storage Device)という8インチのデバイスの開発を指揮した後でIBMを退社。1973年にShugart Associatesという自身の会社を立ち上げる。

 このShugart Associatesが開発したSA-400という5.25インチのFDDはほぼ業界標準となり、多くのマイコンやPCでの採用が決まっている。このSA-400(とその後継製品)に向けて、標準的なインタフェース規格として同社が定めたのがSASI(Shugart Associates System Interface)である。

 その後Shugart AssociatesはXeroxに買収される。シュガート氏は同社を退社してSeagate Technologyを立ち上げる。最初のSASI対応の製品はSeagateの5MB HDDであるST-506で、これが事実上インタフェースの名前として定着することになった。

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