ITmedia NEWS > 企業・業界動向 >

カセットからフロッピー、そしてハードディスクを制御するSASI、SCSI、IDE、ATA、SATA――さまよえるストレージ用インタフェース標準を語る“PC”あるいは“Personal Computer”と呼ばれるもの、その変遷を辿る(4/5 ページ)

» 2022年01月12日 13時06分 公開
[大原雄介ITmedia]

IDEが登場し、市場を席巻

 これは元々Maxtorが開発した、というかST-506をベースに高速化(ST-506は最大でも7.5Mbpsだったが、ESDIは20Mbpsに達した)や拡張性強化(ST-506は最大4台。ESDIはStep Modeで3台、Serial Modeで7台まで接続可能)を施したものだが、自社独自のものとせずにESDI Committeeを立ち上げ、ここで標準化を行い、最終的にはANSI X3.170-1990として標準規格化されている。ただこのESDIは長く使われず、結局IDE(Integrated Drive Electronics)に取って代わられることになった。

 ST-506とかESDIとIDEの最大の違いは、HDD自体の制御をホストがやるのか、HDDがやるのかの違いである。ST-506とかESDIの時代、HDD側には殆ど機能が入っておらず、ヘッドの位置制御とか読み出し/書き込みの操作はST-506なりESDIのI/Fケーブル(34pinと20pinの2本のフラットケーブルを用いた)経由でインタフェースカードが行っていた。

 これに対し、IDEではそうしたHDDの制御そのものをHDD側のコントローラーに移すもので、CPUからは単に「このアドレスのデータを読み出せ」「データをこのアドレスに書き込め」という指令を出し、後はデータの転送を行うだけで良くなった。このIDEという規格は当初はCompaqとCDCとWestern Digitalが共同で開発した規格であるが、すぐにここにConner Peripheralsが加わる。

 余談だがこのConnerを創業したフィニス・F・コナー氏は、元々はShugart Associatesの社員で、その後シュガート氏と一緒に退職してSeagateを創業後、そのSeagateを退職してConnerを創業している。

 そのConnerはCP341という、これまでのHDDの常識を覆す優れた製品を開発しており、そのプロトタイプをCompaqに持ち込んだところ採用が決まった。ただ当時Compaqは上で述べたようにIDEを開発中だったこともあり、CP341は(当初はESDIベースで開発されていたらしいが)IDEに対応する形となった。

 このIDE HDDはシステムコストを大幅に下げられるという理由であっという間に市場を席捲する。Western DigitalにしてもConnerにしても、Compaq「だけ」に供給していたら市場が限られるということで、当然その他のPC互換機ベンダーにも製品を投入し始め、あっという間にPC互換機はIDEを利用するのが当たり前になった。

 1991年にはConnerの市場占有率が85%に達したという調査結果もあるほどあるが、こうなると当然他のHDDベンダーもこれに追従する形でIDEのHDDを投入し始める。

IDEからATAへ

 ここでCompaqが偉かったと思うのは、IDEを独自規格のままとせずに業界標準規格として提案したことだ。最終的にはこのIDEは1994年、ANSI X3.221-1994として標準化される。ちなみに名前はATA(AT Attachment Interface for Disk Drives)となったが、このATはもちろんIBM PC/ATの“AT”から来ている。ここにきて、ATAはPCの標準規格の1つを成すものになった。ただこれに続く規格が登場したことから、これはATA-1と呼ばれることの方が多い。

 これに続き、Western Digitalが信号速度を2倍にしたEIDE(Enhanced IDE)を提唱。これも直ちに他のHDDベンダーやコントローラベンダーで採用され、ANSIでもX3.279-1996(AT Attachment Interface with Extensions ATA-2)として1996年に標準化されるが、これに先んじてコントローラーや対応HDDが市場に出回り始める。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.