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カセットからフロッピー、そしてハードディスクを制御するSASI、SCSI、IDE、ATA、SATA――さまよえるストレージ用インタフェース標準を語る“PC”あるいは“Personal Computer”と呼ばれるもの、その変遷を辿る(3/5 ページ)

» 2022年01月12日 13時06分 公開
[大原雄介ITmedia]

AdaptecとSCSIの誕生

 またShugart AssociatesでSASIの標準化に携わっていたラリー・ブーシャー氏は1981年に退社し、自身でAdaptecを立ち上げている。言わずと知れたSCSIの元祖ともいえるメーカーだ。SCSIそのものがSASIをベースに、もっと広範なデバイスを接続できるようにした規格であり、標準化こそ1986年までかかったが、最初のドラフトは1979年に出ている。ちなみに実際SCSI接続のプリンタやスキャナーなども一時期は結構流行した。

 さて、ここまでの流れは実はPCと無関係である。そもそもIBM PCを開発した時、FDDやHDDに関しては「業界標準に従う」という形でそのままSASIをベースにシステムを構築しており、PC互換機も当然これに倣った形で、当初はSASIをベースに構築された。

 1986年にANSIでSCSIの標準化が行われると、ハイエンド向けにはSCSIを使うといった形での差別化が行われるようになったが、これは1986年にAppleがMacintosh Plusで外部インタフェースにSCSIを採用したり、SCSIの標準化が完了する前からUNIXワークステーションがSCSIをベースにシステムを構築したりした結果として、比較的早い段階からSCSIのマーケットが大きく育ってきており、PCもこの流れを取り込んだからという方が正確であろう(これを仕掛けたのはAdaptecやNCRといった初期のSCSIコントローラーベンダーであって、少なくともIBMではないし、Compaqなどの互換機メーカーがそれを主導したという話も聞かない)。

 ただPCの普及と、それに伴いPCにHDDを搭載するニーズが増えてくるにつれ、「もう少し高速にHDDを使いたい」という要望が寄せられるようになった。そこでESDI(Enhanced Small Disk Interface)が策定された(写真2)。

photo 写真2:ESDI Specification(1984年のRevision D2)。ここにはCDC子会社のMagnetic Peripherals Inc.のロゴが入っているが、これは同社が配布したという意味であって、中身の著作権はESDI Committeeが保有している

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