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事業譲渡で従来の基幹システムが利用不可に…… メーカー企業がデータセンターをクラウド移行するまでの一部始終クラウド事例ウォッチ

» 2022年01月28日 09時00分 公開
[ITmedia]

連載:クラウド事例ウォッチ

クラウド事業者が公開しているクラウドインフラの活用事例から、事業や業務効率化の参考になるものをピックアップ。IaaS・PaaSが実現するビジネスの可能性をコンパクトにお届けする。

 これまで日産グループのデータセンターで運用していた基幹システムを、2020年にクラウドサービス「Amazon Web Services」へ移行した、バッテリーメーカーのエンビジョンAESCジャパン(神奈川県座間市)。同社は19年3月まで日産自動車のグループ企業だったが、事業譲渡によって同年4月から中国のエネルギー事業者、エンビジョングループの傘下に。これにより、今までの基盤が使えなくなったことから、基幹システムをAWSに移した

 エンビジョンAESCジャパンはもともと日産自動車やNECなど計3社が07年に設立した合弁会社を母体とした企業だ。日本や米国など世界4カ所の工場でバッテリーを生産しており、これまでは日産グループ内の共通プラットフォーム上でERPや部品の管理システムなどを運用していた。

 しかし、事業譲渡に当たり、システム基盤までは引き継げないことに。猶予は2020年12月末に設定。それまでに新規に構築しなければ、システム自体が使えなくなる。

photo 移行前と移行後のシステム構成の比較

 そこでエンビジョンAESCジャパンは新たな運用基盤の検討を開始。事業譲渡先のエンビジョングループに利用実績があったことから、AWSへの移行を決めた。さらに基幹システムの移行支援を手掛けるBeeX(東京都中央区)にも協力を依頼し、共同でプロジェクトを進める体制を整えた。

 実際の移行作業は19年12月にスタート。基幹システムは国外の拠点でも使うことから、リハーサルを20年8月と11月に2度実施。問題点を洗い出してから移行することで、トラブルを抑えつつ期日までに作業を間に合わせられたという。

 移行には他のメリットもあった。AWSの北米リージョンにDRサイト(ディザスタリカバリー:災害時などに備えた予備の環境)を置いたことで、日本国内のリージョンにトラブルがあっても復旧しやすくなったという。

 旧システムが抱えていた課題も解決した。これまでの基盤はサーバのストレージ容量が不足しており、トラブルの原因になることがあったが、リソースを増減しやすいクラウドに移行したことで、こういった問題も減らせたという。

 移行の成果を受け、エンビジョンAESCジャパンは今後導入する新システムも、AWS上で運用していく方針だ。AWSが提供する各種PaaSの活用も検討しているという。

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