「当社は昭和的な感じの文化で、AWSについて経営層に聞くと『アマゾンって、あの通販のやつ?』と返ってくる……というのがクラウドに対する認識だった。そもそもITは外部パートナー頼りだったので、サービスの内容や価格を判断できず、(提案に対して)ハンコを押すだけの状況だった」
数年前までの自社の状況について、「白い恋人」の製造元である石屋製菓の平野光一郎さん(経営管理部情報システム室)はこう振り返る。
同社はこれまで、インフラの知識が不足していたことから、懇意にしているSIerの言うままにオンプレミスで基幹システムを運用していた。しかし耐障害性などに課題があったことから、2018年にできたばかりの情報システム室のメンバーが中心となり、AWSに移行した。
「当初は役員も(オンプレミスで)いいんじゃない、という雰囲気。サーバやシステムは『何百万も払うもの』『開発会社様にやってもらうもの』という空気感だった」と平野さん。クラウドのノウハウを持たなかった石屋製菓が、なぜ基幹システムのAWS移行という一大プロジェクトを達成できたのか。
プロジェクトに協力したクラスメソッドのオンラインイベント「Classmethod Showcase Road to 内製化」(11月16〜19日)で、平野さんが一部始終を説明した。
基幹システムの刷新プロジェクトが立ち上がったのは18年。同年にエンジニアである平野さんやその上司となる人物が入社し、情シス部門が立ち上がったことをきっかけに、基幹システムのインフラを見直すことになった。
そこで懇意にしていたSIerに相談したところ、その企業がクラウドを手掛けた経験がなかったため、引き続きオンプレでの運用を提案されたという。役員もそれを了承しており、そのまま計画が進むはずだった。
しかし、18年9月に最大震度7の地震「北海道胆振東部地震」が北海道で発生。道内で停電が起こり、札幌に本社を置く石屋製菓も影響を受けた。これを受けた平野さんとその上司は、事業継続のためにはオンプレではなく、クラウドの活用が不可欠と判断し、方針を切り替えた。
しかし、ここで2つの課題が立ちはだかった。1つは経営層をはじめとした社内の理解不足だ。当時は「基幹システムはオンプレミス前提」という雰囲気が社内にあり、説得が必要だったという。そこで、平野さんの上司は経営層に経済紙の切り抜きやビジネス書を読ませて啓蒙し、地道にクラウドの利点を理解してもらった。
2つ目の課題は、クラウドに詳しい人材の不足だ。情シス部門が立ち上がったのはいいものの、そもそも平野さんはアプリケーションエンジニアでインフラやサーバには詳しくなく、クラウドはおろかオンプレにすら触れたことがなかった。
そこで、平野さんたちはクラスメソッドにコンサルティングを依頼し、懇意にしていたSIerと3社で協力して基盤を移行する体制を整備。インフラ構築を学びやすくするため、移行先には先行事例や教材が充実したAWSを選んだ。平野さん自身も書籍を購入して勉強し、AWSの資格試験を受験するなど、理解を深めたという。
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