こうしたことは、CES 2022で話題だったことからも見えてくる。
CES会場であるラスベガス・コンベンションセンターには、新しくトンネルを使って敷地内を素早く移動する「The Loop」という仕組みができた。
The Loopは日本人が考える「新交通システム」ではなく、ぶっちゃけ単なるトンネルである。その中を人が運転するEVが走っている。
ちょっと拍子抜けしそうな感じになるが、冷静に未来を考えると「そういうことか」と分かってくる。
今は人が運転しているから「なぜわざわざ」という感じがしてくるが、レベル4以上の自動運転が当たり前になればどうだろう?
The Loopを走る車を人間が操作する必要はない。関わる人が最小限になる、という意味ではモノレールなどと変わりない。だが自動車は量産されるものだ。高度な自動運転によってそれがそのまま使えるなら、特別な交通システムを使わなくても同じ仕組みが再現可能になり、コストは大幅に下がる。
もちろん、基幹路線は大量に人が乗れる電車の方がずっといい。だが、「ちょっとした経路」を公共交通化するという意味で、The Loopは極めて論理的なやり方なのである。
ここで前提となるのは、「街や設備が変わる必要がある」ということだ。The Loopも新しく作った設備なので、今後レベル4(地域を限定した無人運転)にも対応できるだろう。曲がりくねった道を走る必然性も減るわけで、難易度も下がる。
こうした発想は、自動運転の未来を考える人々の間では珍しいものではない。
2020年のCESで、トヨタは自社敷地内に実験都市「ウーブン・シティ」(Woven City)を建設する、と発表した。2021年に着工し、24年の完成を目指している。
2020年の発表段階から、ウーブン・シティは自動運転を活用する前提とされている。シンプルな道路構成になっており、さらに、効率的に自動運転車を必要な場所へと「配車」するための地下道が作られている。
この街全体でいえば、新しい公共交通機関を作るどころではないお金がかかることになる。だから「安価」というのは無理がある。
だが、こうした街で何ができるかが見えてくることは重要である。ラスベガスでThe Loopを作ったのはイーロン・マスクだ。彼はテスラで作るEVが街と交通にどういう影響を与えるのかを考え、The Loopを構想したのだろう。
レベル3(ドライバーが関わるが、運転主体はシステムで、限定された場所での自動運転)が実現した段階で、ウーブン・シティやThe Loopは十分に機能するようになる。そこでいろいろな課題・可能性が発見され、改善していくうちにレベル4が生まれてくるだろう。
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