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気がつけばフェードアウト?  ビデオカメラの歴史を振り返る小寺信良のIT大作戦(3/5 ページ)

» 2022年02月07日 08時00分 公開
[小寺信良ITmedia]

ハイビジョン化と記録フォーマットの乱立

 ハイビジョン放送がスタートしたのは2000年。それに先立って放送機器クラスでは、すでにカメラはハイビジョン化されていた。

 コンシューマーでは、2003年にはDVフォーマットを拡張したHDVフォーマットが登場した。製品で先行したのは日本ビクター「GR-HD1」で、720pではあるものの、製品化1番乗りを果たした。ただ主力は日本の放送フォーマットで採用された1080iで、どちらかといえば翌2004年に発売されたソニー「HDR-FX1」の方が記憶に残る方も多いだろう。

photo GR-HD1
photo HDR-FX1

 2000年辺りで記録フォーマット革命が起こる。時系列がまた前後してしまうが、メモリカードに動画を記録するというコンセプトは、デジカメ文脈では1999年頃から始まった。ビデオカメラ文脈では同年のシャープ「インターネットビューカム」こと「VN-EZ1」があった。これはスマートメディアに記録するものだった。

 2002年には松下電器が「D-Snap」という名称で、SDカードに記録するMP4カメラを登場させた。これはどちらかというと「SDカード vs. メモリースティック戦争」の産物であるが、翌2003年の三洋Xacti初号機の登場で、動画をメモリカードに撮るのが「安かろう悪かろう」ではなくなっていった感がある。

 パソコン史に詳しい方なら、2000年頃からパソコンでもDVDライティングブームが起こり、「DVD-RAM vs. DVD-R/RW vs. DVD+R/RW戦争」が勃発したのはご記憶だろう。

 この流れはビデオカメラにも及び、2003年には日立が8cmDVD-RAM/Rに記録する「DVDCAM」を登場させ、人気を博した。松下電器にも製品があったが、これは同じDVD-RAM派である日立からのOEMであったはずである。

 一方でDVD-R/RW派では、ソニーとキヤノンが8cmDVD-R/RW記録の製品で対抗した。ソニーはレコーダーではDVD+R/RW派だったのだが、ビデオカメラではDVD-R/RWが採用されるなど、社内で割れる結果となった。

 2004年にはHDDに記録するビデオカメラとして、ビクターが「Everio」の初号機を登場させた。小型HDD搭載ということで、2005年には東芝も「GigaShot」でビデオカメラ業界に参入したが、離脱も早かったので、これはご存じない方も多いかもしれない。

 ここまでは、SD記録の話である。2006年には、ソニーと松下電器が共同で、DVDにHDを記録する「AVCHD」規格をスタートさせた。

 ビデオカメラのHD化は期待されているものの、いつまでもテープ記録ではないだろうということ、Blu-rayドライブを小型・低価格化してカメラに積むのはまだ時間がかかるといったことが、その背景にあった。コーデックがMPEG4なことや、ファイルストラクチャ構造などはBlu-rayと同じなど、Blu-rayの技術を転用したことで、すばやい展開が可能だった。

 同年にはDVD型、HDD型、メモリカード型のビデオカメラが2社から出揃った。その陰でシャープは、DVの「液晶ビューカム」を出していたが、今後の展開が望めないとして2006年に生産終了、ビデオカメラから撤退している。

 2007年はさまざまな思惑が入り乱れた。

 キヤノンはAVCHDに賛同。ビクターや三洋はこのフォーマットには乗らず、シンプルにMPEG2やMPEG4でHD記録する方法を選んだ。日立は2007年に世界初の8cm Blu-ray記録のBDCAM「DZ-BD7H」を登場させた。一方東芝はHDD記録の「GSC-A100F」でHD化を果たしたが、ファイルストラクチャがHD DVD互換という、「Blu-ray vs. HD-DVD戦争」に巻き込まれた格好になった。

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