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気がつけばフェードアウト?  ビデオカメラの歴史を振り返る小寺信良のIT大作戦(5/5 ページ)

» 2022年02月07日 08時00分 公開
[小寺信良ITmedia]
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ビデオカメラに引導を渡した2つのカメラ

 ビデオカメラに引導を渡した製品は、あと2つある。1つは2010年発売の、パナソニック「DMC-GH2」だ。

 ミラーレスという構造は、ミラーがないため常時光がセンサーに当たり、ライブビュー状態にある。これはビデオカメラと同じ仕組みであり、ミラーアップして動画を撮るために別モードが必要な一眼レフと違い、圧倒的に動画向きなのである。以降GHシリーズは、写真ではなく、ほぼビデオカメラとして受け入れられることとなる。

 途中3Dブームを挟むが、ビデオカメラにとっては順風とはならなかった。そして引導を渡したもう1つのカメラが、2014年発売のソニー「α7S」だ。

photo α7S

 最高ISO感度40万9600という高感度は、フルサイズの面積に対して画素数を減らしてピクセルサイズを上げたから実現できた。デジタルシネマ用カメラならフルサイズはありだが、コンシューマー機ではない。つまり民生用ビデオカメラでは不可能な到達点だった。

 2019年にキヤノンが、コンシューマービデオカメラ「iVIS」シリーズの販売終了をアナウンスした。ソニーのハンディカムシリーズは、2018年を最後に新製品がないが、業務用のPXWシリーズやシネアルタのFX6、FX3はコンシューマー市場で販売されており、「上へ逃げた」格好だ。また2021年には「FDR-AX45」の受注を再開しており、新製品はないが製造・販売は止めていない状態にある。

 残るはパナソニックだが、2021年11月にもマイナーチェンジモデルを2つ投入しており、最後の需要を取り込んでいる格好だ。

 民生用ビデオカメラの技術は死んだわけではなく、アクションカメラやドライブレコーダー、ヘッドが回転するPTZカメラといったものに変わっている。需要がなくなったのは「専用機としての市場」だけで、そもそもの用途はデジタルカメラとスマートフォンに吸収された。

 明確に撤退というのではなく、各社がフェードアウトのように去っていっているのは、そうした理由からだろう。考えてみればプラットフォームとしては約50年も続いたわけで、しかも業務用機ではまだまだ需要が残っている。

 今後は、ビデオカメラを知らない子供たちが出てくることだろう。だが動画文化は、今もなお発展し続けている。

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