高橋さんも「ノーコードはSaaSよりも柔軟に業務に適用できることから、ニッチな現場業務に向いているし、さまざまなツールの中から業務に合ったものを選べますが、ツールが非常に増えていて最適なものを選び取るのが現実的に難しい状況」と補足する。
「特に中小企業では、『ノーコードでシステムが魔法のように作れる』と思われがち。しかし、それで飛びついてみると実際にはそれほど難易度は低くない。そこで諦め、結果として普及しないという課題があります」(西谷さん)
「中小企業はITシステムについてSIerに頼る傾向がありますが、SIerの中でも必ずしもノーコードの使い方が定まっているわけではありません。SIerのビジネス上ノーコードと噛み合わない場合もあります。一方、大企業ではノーコードの導入で稟議のプロセスを踏む必要があります」(同)として、企業規模ごとに導入前後の課題があるとした。
ノーコードの持続性、つまり、提供企業の買収や方針転換、倒産などで使えなくなってしまうリスクについてはどう考えたらいいのか。
「ノーコードの中でもツールによって特性は違うので、想定する利用タイムスパンとして一概に何年とはいえません。しかし、SaaSを入れ替えるように『気軽に入れ替えられるもの』としてシステム設計するのが大事です」と高橋さんは指摘する。
西谷さんは加えて「例えば、データを貯める部分はしっかりアーキテクチャ設計することで、データを入力する部分を切り離しておくことはできます。ここにノーコードを使うことで、BIツールを入れ替えるのに近い感覚でノーコードも入れ替えられる。そういう設計をしていれば、ツールの寿命はあまり気にせずに今使いやすいものを導入できるのではないでしょうか」という見方を示した。
「課題なのは、こうしたアーキテクチャ設計をできる人が社内になかなかいないこと」と西谷さん。
「ノーコードをうまく使ってる企業の事例を見聞きすると、そうした企業は強いITトップが旗を振ることでうまく使えているようにみえます」(同)
DXがトップダウンによる組織改革であるように、ノーコード活用もCIO(最高情報責任者)といった旗振り役がいると、現状ではうまくいく場合が多いようだ──西谷さんと高橋さんはこう共通認識を示した。
NoCoders Japanの高橋さんと西谷さんに聞いて分かった、業務改善に向けたノーコードの適切な使い方は以下の2つにまとめられる。
ノーコードは、ベンダー企業の打ち出し方によっては「それ一つで現場の悩みが全て解決するもの」と聞こえてしまうこともある。西谷さんも指摘していたように、これは魔法のツールではない。現場業務の改善にノーコードを検討するに当たっては「上記の2つを満たしながらノーコード化で改善が見込めるものは何か」という視点を持つとよさそうだ。
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