さてさてここまでCruiseのことを書いてきましたが、Cruiseのライバルはいるのでしょうか? Googleの親会社であるAlphabet傘下のWaymoがサンフランシスコでのテストを本格化させていて、最近はCruiseと同様に多くのWaymoのテスト車両を見かけます。JAGUARのI-PACEという電気自動車のSUVがベースのため、CruiseのBoltと比べると車体が大きいです。
WaymoはGoogleのお膝元のマウンテンビューで自動運転のテストを開始し、その後アリゾナ州フェニックスを中心に実証実験を行ってきました。フェニックスではドライバーレスの自動運転走行のテストを2017年11月より始めていて、2020年10月にはドライバーレスのタクシーサービス「Waymo One」を一般に公開しています。
サンフランシスコではまだドライバー付きで自動運転のテスト走行しているようですが、フェニックスと同様にサンフランシスコでドライバーレスのタクシーサービスを提供する日も近いでしょう。CruiseとWaymoが競い合うことで、サンフランシスコがこうしたビジネスの中心になっていく未来が見えてきます。
Cruiseに興味を持ってから公式チャンネルの多くの動画を視聴しましたが、分かりやすい動画で彼らのさまざまな取り組みをオープンに紹介していてとても好感が持てました。また、動画からは自動運転の技術開発だけでなく、サンフランシスコの街や人にどう認められて浸透していくか、というところにも力を入れているように感じます。
例えば、次の動画はサンフランシスコの警察と消防に対して、Cruiseの自動運転車が事故等により緊急対応が必要になった時にどう対応すべきか説明したトレーニングビデオです。警察OBと現職の消防隊員の人を交えて分かりやすく解説しています。
事故や故障で道路に停車していたとしても、ドライバーがいなければ何が起きているか把握することはできませんし、現場での緊急対応もできないですよね。車が自動運転を継続しようとすれば、駆けつけた隊員がさらなる事故に巻き込まれるかもしれません。
このビデオは最初にCruiseの各車両の識別方法や、Cruiseのエスカレーション(上級サポート)チームへの電話連絡の仕方を説明しています。エスカレーションチームは、車両の状態確認、自動運転モードからマニュアルモードへの変更、また遠隔からのサポートができ、場合によってはフィールドエンジニアが現場まで駆けつけるそうです。続いて、事故で乗客を救出することを想定して、実際に消防隊員が車両を解体するデモを行っています。
自動運転と聞くと、衝突を避けて安全に運転できる技術開発をイメージしてしまいますが、ドライバーレスタクシーサービスの実用化のためにはそれだけでは足りなくて、遠隔から車両の状態を監視・制御する技術や、緊急時のサポートができるエスカレーションチームの立ち上げ、警察・消防との緊急時の手順の確立、そしてそのトレーニングなど多くのことが必要であることに気付かされます。
これはその一例ですが、こうした活動を通して、ドライバーレスの自動走行に対する漠然とした不安を一つ一つ解消していくことで、サンフランシスコの社会に受け入れられていくことになるのでしょう。
今回はサンフランシスコでのCruiseのドライバーレスタクシーサービスの最近の動向と一般の申し込みの様子について紹介しました。いかがだったでしょうか。
サンフランシスコにおけるCruiseの動向を見てると、Waymoとの競争もあり、ドライバーレスタクシーサービスの実用化は大きく前進すると思われます。どのような展開になっていくのか今後も注目していきたいと思います。またCruiseに実際に乗車することができたらこの連載で体験レポートを書く予定です。お楽しみに。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR