「2021年8月に、当社から持ちかける形で始まりました。ただし当初は今のような協業の話ではありませんでした。若手同士のワークショップを開始したところ、そこで両社が化学反応を起こすような、大きな可能性を感じました」(ホンダ・三部社長)
すなわち、ホンダとしては「モビリティの変化に向け、自動車会社にはない技術とアイデアを持つパートナー企業」を探しており、そこにソニーという存在があった、ということなのだろう。
一方のソニーは、EVを作る設備を持っていない。今後もそこには大きな投資はせず、パートナーとともに製造・販売を行う戦略。EVを販売するなら、製造面でも、アフターサポートの面でもパートナーは必須になる。
両社が組むのが必然であったかはともかくとして、両社がお互いを必要としていたことは間違いない。
一方で、ホンダ側は、今回のソニーとの提携について「ホンダのEV戦略とは一線を画す」「従来の提携では台数規模を追って収益を上げていくことが目標だったけれど、今回は『そうではない』とはっき言えます」(ホンダ・三部社長)ともいう。
会見中、「ずいぶんはっきりというのだな」と思ったのだが、そのくらい、自社のEV戦略とは違うもの……ということを強調している。
これはどういうことだろうか?
一つ考えられるのは「スピード」だ。
ソニーとホンダが組んで出すEVは、2025年に初代モデルの販売を予定している。3年後というのはITガジェットの感覚だとずいぶん先に思えるが、自動車の感覚では「もう3年しかない」というところだ。会見でホンダ・三部社長は再三「あと3年しかない」という言い方をしていたのだが、本音での発言だと感じる。
しかし、仮にホンダの戦略にソニーのEV計画が大きく影響するとなると、「ホンダとしての本気のEVは2025年以降」と認識されかねない。
足元では、すでにヨーロッパを中心に(ウクライナ紛争で多少雲行きが怪しくなってきたが)EVシフトが進んでいる。ホンダとしては、発売済みの「Honda e」も含め、すでに何年も進めてきたEV戦略が順調であり、2025年を待たずとも戦略を進められる……というメッセージを伝える必要がある。
そもそも、ソニーは自動車市場では新参者だ。ホンダなどの大手自動車メーカーに匹敵する台数をすぐに売れるわけでもないし、作れるわけでもない。2025年以降も、当面は限定された数の高付加価値モデルが中心になるだろう。
その点を考えても、ホンダの目線で言えば、自社のEV戦略と混同されるのは避けたいのだろう、と予想できる。
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