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「唐揚げ2個、やっぱり3個で」 あいまいな命令でも“分かってくれるロボ”、三菱が開発2022国際ロボット展

» 2022年03月11日 15時00分 公開
[谷井将人ITmedia]

 三菱電機は3月9から開催中の「2022国際ロボット展」(東京ビッグサイト、12日まで)で、口頭の指示でも正確に作業を実行できるロボット制御技術「ティーチングレスロボットシステム技術」を披露した。「唐揚げ2個を弁当箱の第1区画に入れて……あ、やっぱり3個で」といった指示でも速やかに実現できる柔軟性を備えた。

photo 唐揚げをつかんで容器に運ぶロボットアーム

 ティーチングレスロボットシステム技術は、音声認識や空間認識、AI、ARといった技術を組み合わせて開発したロボット制御技術。専門知識がない人でも、口頭でロボットに動作を教えられるようにし、導入ハードルを下げるのが目的の一つだ。

 ロボットに動作を教えるには、ポータルとなるタブレットに話しかけるか、専用アプリにある「何を」「どこに」「何個」という項目を埋めるだけでいい。話しかける際も「唐揚げを、弁当箱の第1区画に、2個入れて」と頼めば実行できる。指示した後は、実際のロボットにタブレットのカメラを向け、AR映像を重ね合わせることで、意図した通りにロボットが動作するかを事前に確認できる仕組みだ。

photo 口頭の指示を聞き取って動作内容を確定

 声でロボットに動作を教えられる技術は産業用ロボットメーカー業界で初という。食品加工工場などでは、食品を扱う関係上、手で機械のタッチパネルを操作できない場面も多いため、声で指示できるシステムを開発したという。

 三菱電機は、騒音の大きい工場内でも指示を認識できる音声認識AIを独自開発。人間でも聞き取りにくいような環境でも指示ができる。国際ロボット展の会場でも、特に声を張り上げずとも指示が通った。

 指示する言葉が曖昧でも、必要情報がそろっていれば動作できるのが特徴。「唐揚げを第1区画に2個」でも「第1区画に2個の唐揚げ」でも実行できる他、「唐揚げ2個を弁当箱の第1区画に入れて……あ、やっぱり3個で」といった“フェイント”にも対応できた。

食品を人間と同じスピードで取り扱えるのも特殊能力

 工場見学や生産現場を記録した動画などでは、ロボットアームが高速で製品やパーツを動かしている場面を目にすることもあるだろう。しかし、三菱電機によると食品分野において、人間を超えるスピードで食品を動かすのは至難の業という。

 「工業系の現場でロボットが高速に動作できるのは、常に同じ形のものを一定の場所から一定の場所に移すからです。食品は全て形が違う上、トレーなどに山盛りになっていると、取り上げる場所も毎回異なるため、人間のようなスピードで取扱うのは難しいです」(三菱電機)

photo 山盛りの唐揚げでも適切にピックアップできる

 このような問題から、食品加工工場はこれまでロボットアームの導入が難しい状況だったという。

 「人材不足に悩む現場の人々も、導入して良くなるなら取りあえず考えてみたいという話をよく聞きます」(三菱電機)

 ティーチングレスロボットシステム技術搭載のロボットは、アームの先端に取り付けた3Dカメラで周囲の環境を3Dモデル化し、動ける範囲を確認。ベルトコンベヤー上部に設置したカメラで流れてくる弁当箱の位置や傾きを検知し、自動で動作を最適化して食品を詰める作業ができる。

 この自動最適化技術と、口頭で指示できる仕組みを組み合わせたことで、人間のように“言えば理解して人間と同程度のスピードで作業できる”ロボットアームが実現した。

 ティーチングレスロボットシステム技術は開発が終わってデモンストレーションを公開している状況であり、販売は未定という。

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