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勉強だけではないITへ コロナ休業の学校と子供たちの課題小寺信良のIT大作戦(2/2 ページ)

» 2022年03月16日 08時13分 公開
[小寺信良ITmedia]
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学校から家庭へのアクセス

 一方で、長期休業となれば、生徒の学習状況の把握も必要になる。2〜3日ならサボってもどうにかなるが、1カ月もとなると学習に大きな穴が空くからだ。

photo 臨時休業と児童生徒の学習状況把握手段

 これについては、電話やFAXといったアナログな手段による個別対応がほとんどの期間で最多となっている。これに、登校日を設けて状況を確認するという手法が併用されているようだ。長期化すればIT的な手法が増える傾向にあるが、それでも家庭訪問に及ばない程度で、IT活用で先生の負担を減らすという方向にはまだ遠いことが分かる。

 学級閉鎖はいつ何時決定するか分からず、子供たちが家に戻ってから決まることもある。ここでも、学習端末の持ち帰りが課題となる。毎日持ち帰っていなければ、急な連絡ツールとしての活用も見込めない。活用とは、勉強させることだけではないはずだ。

 休校期間中の家庭学習で、子供たちが学校の課題で分からないことをどうしたかという設問は、興味深い。小学生では最多が「家族に聞いた」となっているが、これは小学生の内容なら保護者でも分かる、という点が大きいだろう。

photo 休校期間中、学校の課題で分からないことへの対応

 これが中学生になると、「家族に聞いた」は半減し、「友達に聞いた」がそれを埋めることになる。この場合、直接対面で聞いたとは考えられず、なんらかのオンライン手段を利用したということだろう。数年前まで、SNSやメッセージなどのネットコミュニケーションは、学習とは無関係という立ち位置だったが、今となってはそうも言っていられない状況であることが分かった。

 ネットでのコミュニケーションを闇雲に禁止する家庭もあるが、どうもそうした考えは時代に合わなくなってきたようだ。それを続ければ子供が孤立するだけでなく、学習にも遅れが出る可能性もある。

 また子供にとっても、遊ぶ仲間以外に、勉強を教え合うコミュニティにも参加する必要が出てきたということでもある。遊び仲間は大抵、勉強では戦力にならないというのは、今も昔も変わりあるまい。子供の世界でも、ITによるコミュニケーションは、単なる遊びではなくなってきたということかもしれない。

 もちろん保護者への連絡も、ITの活用が進んできている。子供が学校に行かなければ、「お手紙」を持って帰らなくなるからだ。以前から緊急連絡のために一斉メールを導入していた学校は多いと思うが、緊急ではなく日常的な連絡が必要な場合、メールでは見逃されてしまう可能性が高い。

 学校向け連絡網サービスとしては、「マチコミ」がよく利用されている。また私立校では教育支援システムとして「Classi」が採用されているところもある。これも保護者への連絡機能がある。

 筆者が5年前に、PTA広報紙をLINE化したときには、「スマホを持ってない保護者はどうするのか」「LINEを使わないとPTA活動もままならないのか」といった批判があった。もちろん当時からスマホを持っていない保護者など皆無だったのだが、とにかくスマホを教育に利用させたくない、変化大嫌いという保護者の難癖であった。

 だがそこからあっという間に状況が変わった。コロナ禍は、感染しなくても社会全体が苦しみやがまんを強いられることが多いが、IT利用に関しては「対面で合わないための技術」として、反対派の誰も説得する必要がなく拡がり、定着した。5年10年かかる変化を、1年2年で成し遂げたといえる。

 今後、教育はもっと変わってもらわなければ困る。「コロナで学びを止めない」は、がまんして学校へ来いという話ではないはずだ。家庭においても、机へ向かわせる学習スタイルが、もう古くなってしまうのかもしれない。

 保護者は、そうした変化に対して柔軟に受け入れる態勢が必要になる。そもそも、自分が子供この頃の学習スタイルが、30年40年経っても同じということのほうが、むしろ異常だったのである。

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