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停電でもモバイル回線が使えるワケ 携帯キャリア4社に聞く“基地局設備”

» 2022年03月22日 21時00分 公開
[ITmedia]

 3月22日の東京電力管内の電気使用量が100%を超える状況が続いている。3月16日に発生した地震を受け、一部の発電所がストップしていることと、気温が急激に下がったことで、電力需要が逼迫している。

 送電を担当する東京電力パワーグリッドによると、「現在は足りない分を揚水発電所の出力調整で対応している状況」という。揚水発電に使う水は一時、午後8時になくなるとされていたが、需給状況が少し改善し、現在の使用可能水量は午後10時で8%残ると予測されている。

 とはいえ、停電の可能性が消えたわけではない。特に気になるのが通信インフラだ。生活や仕事と切っても切れないインフラであるとともに、テレワークにも大きく影響する。停電でもモバイルネットワークは維持されるのだろうか。

携帯4社「停電しても当面はネットワーク維持可能」

 携帯キャリア4社に確認したところ、各社とも予備電源を備えている基地局などを設置しており、「停電でスマホが使えなくなる」ということはないようだ。各社の取り組みは以下の通り。

 NTTドコモは、電力の供給が難しくなった場合でも、運営に支障がないよう基地局に原則バックアップ電力を備えている。設備の新しさや出力によっても異なるようだが、蓄電/発電設備を備えており、中には24時間程度の稼働できる基地局や、官公庁など無停電化しているところもある。通信エリアは複数の基地局がかぶさるように展開しているため、1つの基地局で電力が底をついた場合でも、他の基地局でカバーすることもできる。

 ドコモでは、一歩先の節電対策を進めている。品川にネットワークを監視するオペレーションセンターがあるが、同施設で使用する電力を22日から自家発電に切り替えているという。大災害を想定した設計のため、万が一該当エリアで停電が発生した場合でも稼働できる余力を持っているようだ。

ドコモの基地局用発電機とバッテリー

 KDDIも基地局の運営についてはドコモと同様だ。全ての基地局に非常用電源を備えており、停電してもすぐにはネットワーク回線に影響は出ない。24時間稼働する基地局も全国に2200カ所あるという。基地局の非常用電源がなくなった場合でも、周辺の基地局が補間しあってエリアを維持するなどして、ネットワークを維持。基地局の稼働状況によっては、移動基地局などを投入するなど極力ネットワークを維持するという。

KDDIが所有する移動基地局

 ソフトバンクも上記2社と同様だ。全ての基地局に非常用電源があり、病院や役場などの主要施設に設置されている基地局には発電機が備えられている。移動基地局など災害時の取り組みも同様だ。同社独自の取り組みとしては、ソフトバンクの「おうちでんき」ユーザーなどを対象に、節電を意識してもらうよう、独自の「エコ電気アプリ」を提供。ユーザーの過去の電力使用量を基に目標値を設定し、実際の使用量が低かったら成功、ポイントが付与されるという。

「エコ電気アプリ」

 楽天モバイルでも、基地局に予備電源やバッテリーを配備している他、主要施設には発電機を用意しているという。停電が起きても、基本的にはそのまま使えるようになっているが、長期に停電が発生すると通信環境に影響が出る可能性があるため、その際は改めてユーザーに告知するとしている。

 東京電力によると、電力需給のバランスが崩れると各変電所に設置している「UFR」(周波数低下リレー)と呼ばれる安全装置が自動的に作動し、一部地域への送電を停止するという。このため局地的な停電はあっても東電管内全域を巻き込むようなブラックアウトは発生しないという。

 16日の地震でも一部地域で停電が発生したが、基地局はバッテリー稼働していたという。こうしたことから、基地局の非常用電源に加え、移動基地局などを活用することで、局地的な停電にも十分対応可能と考えられる。また、ユーザー側の対策としては、停電した際によりスマートフォンのバッテリーを維持できるようよう、4社とも必要であれば省電力モードの活用を案内している。

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