ちょっと気になるものを買ってしまうのはライターという職業の性なのだが、今回は久々に大当たりを引いた。
なにかといえば、Razerが発売したBluetooth対応マイク「Razer Seiren BT」(以下Seiren BT、価格は1万2980円)のことだ。
この記事は、毎週月曜日に配信されているメールマガジン『小寺・西田の「マンデーランチビュッフェ」』から、一部を転載したものです。今回の記事は2022年3月21日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額660円・税込)の申し込みはこちらから。さらにコンテンツを追加したnote版『小寺・西田のコラムビュッフェ』(月額980円・税込)もスタート。
Bluetoothマイクなんて別に珍しくないし、写真を見る限り、形が変わっているわけでもない。
だが、これが非常に良くできた仕様の製品なのだ。カタログからではわかりにくい、実に「今らしい」作りのマイクになっている。正直いって革命的な作りだとすら思う。
どこがどうすごいのか、解説してみたいと思う。
Seiren BTは、見た目は本当に普通のBluetooth対応ピンマイクである。だが、普通のピンマイクだったら筆者も買わない。
ポイントは「AIによるノイズ低減を導入している」ことにある。
3年ほど前から、AI(機械学習)を使って「声だけを際立たせる」技術が広がっている。本メルマガでも何度も触れてきた「キータイプ音低減」もその1つだ。今はZoomやMicrosoft Teamsなどの会議ソフトにも標準搭載されるようになり、PCに組み込まれる例も増えている。
実際、効果は劇的だ。
周囲の騒音やキータイプ音がきれいに消え、声だけが聴こえてくる。音を加工しているので、声に多少人工的な響きが混ざるのが難点ではあるのだが、それでも「聴きやすさ」という意味では、圧倒的な違いがある。
この種の技術は、PCやスマホのプロセッサが持つ「機械学習系コア」を使って効率的に処理するか、プロセッサ自体のパワーでゴリ押しするかという形で実現されてきた。
だが、技術の進化とともに、非常に消費電力の小さなチップでも実現可能になっている。
そこで、マイクを備えたポータブル機器自体に「AIによるノイズ低減」を組み込んでしまう例が出てきた。
先日ソニーが発売した完全ワイヤレスイヤフォン「LinkBuds」も、通話音質向上のために「AIによるノイズ低減」を取り入れていた。同様に、Seiren BTも「AIによるノイズ低減」を組み込んだピンマイクになっているのだ。
なによりも、どれほどの効果があるかを知ってもらうのが近道だろう。そこで動画を用意した。
この動画で再生しているのは、周囲で雑踏のSEを流しながら(聴感的には、カフェにいる時と同じくらいの音量だ)、キーボードで激しくタイプしつつ喋った声を録音してみた音だ。
最初のものは「何もノイズキャンセルがない」状態。MacBook Proの内蔵マイクでそのまま録音したものだ。喧騒(けんそう)の音ももちろんだが、タイプ音がひどくて何も聴こえない。
次に、LinkBudsで録音した音。これはかなり違う。喧騒は消え、タイプ音はわずかに残るだけだ。声はちょっと「加工した感じ」がするが、聴こえやすいことは間違いない。
では、本命。Seiren BTはどうだろう?
こちらはLinkBudsよりさらにノイズが消えている。声もかなりしっかり聞こえる。AIノイズ低減の効き具合は「オフ」「低」「高」の3種類から選べるのだが、「低」でも十分な効果を感じられる。
きれいに声を録音するのは意外と難しいものだ。指向性の高いマイクをちゃんとセッティングすればいいのだが、素人にはなかなか難しい。急いですぐにできるものでもない。
だが、AIノイズ低減のあるマイクであれば、指向性を気にかける必要はない。シンプルに、ただ使えば声だけを残してくれるのである。
実際、Seiren BTも指向性のないシンプルなマイクになっていて、そこそこ離れた場所にいる人の声もちゃんと拾う。具体的にいえば、机を挟んで向こう側で話している取材相手の声と自分の声を、同時にちゃんと拾えるわけだ。しかも、タイプや空調ノイズの入らない形で。
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