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セグウェイ風に遠隔操作できる車輪付き人型ロボット、米国の研究チームが開発Innovative Tech

» 2022年04月05日 08時00分 公開
[山下裕毅ITmedia]

Innovative Tech:

このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。

 米University of Illinois at Urbana-Champaignの研究チームが開発した「Hands-free Telelocomotion of a Wheeled Humanoid toward Dynamic Mobile Manipulation via Teleoperation」は、車輪付きロボットを遠隔から体重移動で操作するシステムだ。ユーザーはヘッドマウントディスプレイ(HMD)を装着し、ロボットからの視線を体験しながら、身体を傾けて前後左右、斜めに操作する。

提案手法の将来のイメージ図。今回は脚部ロボットだけを検証する

 車輪が付いたロボットを操作する場合、ジョイスティックなどのコントローラーを使用して制御するケースが多い。しかしそれだと手がふさがり、アーム作業ができる人型ロボットを制御する場合には適していない。移動時にアームの操作を手で同時にしたいからだ。

 そこで研究チームは、セグウェイのように身体全体の体重移動で車輪を制御するシステムを提案する。ハンドフリーでロボットの移動をスムーズに行い、手はアーム制御に開放できる。今回は脚に焦点を当て、脚部ロボットで車輪の動きだけを検証した。

 提案する脚部ロボットは、人間のような足の代わりにアクティブホイールを採用した一対の脚を持つ。各脚は1自由度機構からなり、太もも部分と脹脛部分を結合して車輪移動時のバランスを確保する。脚部ロボットには、4つのアクチュエータやモーター、バッテリーなどが組み込まれており、胴体には慣性計測ユニット(IMU)が取り付けられている。IMUから取得する数値を基に胴体姿勢の推定値を出力する。

脚部ロボットの概要

 操縦者側のハードウェアは、操縦者が体を傾けても転倒しないように、後方から2本のリニアアクチュエータが背中に取り付けられる。このリニアアクチュエータにより、バネのような力が発生し操縦者が前後に傾くことができる。将来的には、4つのリニアアクチュエータを採用し、操作者の胴体に対して多方向からの力とトルクを発生させる予定だという。

人がロボットを操作するアーキテクチャの概要図

 実験では、高速移動を行う直線コースと、コーンを回避しながらジグザグに進む障害物コースの2種類を用意した。操縦者はHMDを装着し、ロボットの視線から見える景色を見ながら操作する。

 ジョイスティックによる操作と身体の傾きによる操作を比べた結果、ジョイスティックの方が提案手法よりも速くゴールしたものの、わずか数秒の差しかなかった。障害物を避ける経路の誤差は数cmであった。

 操縦者が3日間練習すると、よりうまくコントロールできるようになり、ジョイスティック制御に匹敵する可能性が示唆された。

Source and Image Credits: Purushottam, Amartya, et al. "Hands-free Telelocomotion of a Wheeled Humanoid toward Dynamic Mobile Manipulation via Teleoperation." arXiv preprint arXiv:2203.03558 (2022).



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