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「PCはネットワーク接続できて当然」になったのはいつから?“PC”あるいは“Personal Computer”と呼ばれるもの、その変遷を辿る(3/4 ページ)

» 2022年04月20日 11時08分 公開
[大原雄介ITmedia]

TCP/IPが前提ではなかった

 ちなみにこの時期のLANというかNetworkは、そもそもTCP/IPのことを一切考えていなかった。TCP/IPの原型であるNCPは1971年頃からARPANETに実装され、1983年にはこれがTCP/IPに切り替わったが、ARPANetがNFSNetに置き換わったのが1985年。商用サービスと接続されたのは1989年のこと、WWWが発明されたのは1990年と割と「つい最近」のことである。これらがInternetとして一般に広く利用されるようになるのは1990年代後半の話(商用サービス自体は、米国だとUUNetが1990年にネットワークプロバイダーサービスを開始しており、国内だとRimnet、Bekkoame、インターネットWINの3大老舗プロバイダーがサービスを開始するのは1995年である)。ただこの当時はプロバイダーにモデムで接続してInternetを利用するという形態だったから、そもそも自分のLANにTCP/IPを導入すべき理由が一切なかった。このため企業ユーザーなどを除くと、そもそもTCP/IPをLANに導入しているところはごくわずかだった。

 また、何か血迷って(?)EthernetカードにTCP/IPを入れようとしても、導入のハードルが猛烈に高かった。当初からTCP/IPを実装していたUNIX系のOSはともかく、MS-DOSはそもそもTCP/IPのStackが一切用意されていなかった。もちろんサードパーティからTCP/IP Stackがいくつかリリースされていた。

 有名なところでは米NetManageのChameleonで、実は筆者も購入した事があるのだが、あまりの設定の難しさに放棄した記憶がある。当時のことだから、そもそもEthernetのドライバとは言ってもTCP/IPに対応したものは存在せず、NDIS(NetWareのドライバ)あるいはMS-NETWORK用のドライバを利用してTCP/IPを利用できるようにする形なのだが、この設定がINIファイルの書き換えで、しかも何か間違ってると動作せず、しかもログも何も出ないので何が悪いのか分からない、というあたりが猛烈に使いにくかったわけだ。

 大きく変わったのは、Windows 95の登場である。Windows 95では当初からTCP/IPのNetwork Stackが搭載され、しかも設定が容易で、おまけに問題が確認しやすかった。この頃になると、10BASE-TのHubもだいぶ値段がこなれてきており、この直後には100BASE-TXも標準化、ゆっくりとPC向けにも製品が投入され始める。

photo Windows 95のインストールCD-ROM

 時期的はちょうどPCのBusがISAからPCIに変わるタイミングであり、NE2000互換カードなどのISAベースのEthernetカードは、次第にPCIベースの100BASE-TXのカードに置き換えられていく。

 そしてインターネットプロバイダーへの接続も、従来のモデムからDialup Router(ネットワーク接続が発生すると、自動的にプロバイダーに電話を掛けて接続してくれる)に切り替わり始め、加えてCATVあるいは2000年代に入ってのADSLによる常時接続が急速に普及し始めたことで、モデムでの接続は急速に廃れてゆく。こうなると、むしろTCP/IPで接続する方が便利、となったのが2000年以降の状況である。

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