昔ながらのIBM PC、PC/AT互換機からDOS/Vマシン、さらにはArmベースのWindows PC、M1 Mac、そしてラズパイまでがPCと呼ばれている昨今。その源流から辿っていく第18回は、今や常識すぎる「ネットワーク接続機能」をPCが持つようになったのはいつ頃からか、というお話です。
今ではついてて当たり前だが昔はなかったモノ、というのはPCにはいろいろあるわけで、例えばいわゆるPC(というかAT互換機)で一般的に音声の取り扱いが可能になったのは、音源ボードが一般的に搭載されるようになり始めた1990年代のことである。
最初はAd LibのALMSC, 次はCreative Labs(後のCreative Technology)のSound Blasterで、その後はさまざまな製品が広く出始めるようになり、最終的にチップセットがAC'97(Audio Codec 97)を標準サポートした辺りで「音が出ないPCなんて存在しない」ことになったが、最初のIBM PCはスピーカーからBeep音が鳴るだけだったことを考えると隔世の感がある(注1)。
※注1: Microsoftが1991年にWindows 3.0のアドオンとしてWindows MME(Multi-Media Extensions)を出したときに、Beep音の周波数をソフトウェアから強制制御して音を鳴らせるドライバというものが登場したが、まぁ音色の違いは分かるものの音質の方はお察しであった
同じように、当初は全く搭載されていなかったのに、今では当たり前のように搭載されているものに「Network」(ネットワーク)がある。
あえてEthernetと書かないのは、最近はEthernetを持たない、ワイヤレスだけの製品も存在するからだが(注2)、ちょっと前はミニノートでもEthernetが標準的に装備されていた時代もあったわけで、加えて言えばもうOSやアプリケーションがNetworkがつながっていることを前提としたサブスクリプションやらアップデートやらを提供している現状では、NetworkはPCには欠かせないものになっているとしても良いかもしれない。
※注2: Wi-Fiは物理層こそ無線ながら、上位層は有線Ethernetそのものなので、その意味ではどちらもEthernetなのだが、この記事ではEthernet=LANケーブルなどを用いた有線のEthernet、Wi-Fiは無線のEthernetとさせていただいている
そんなNetworkであるが、実は長らくNetworkというものは標準では搭載されなかった。今と違って、複数のPCが連動して動くなんて使い方をそもそもしてなかったのだから、無理もない。もちろんUNIX(not Linux)ベースのサーバの下に複数のクライアントがぶら下がる、なんてケースもないわけではなかったが、それにしても随分後のことだ。
ではどんなところからニーズが始まったかというと、最初のものはプリンタ共有である。
複数台のPCで事務処理をすることそのものは良いが、プリンタをPCの台数だけ用意するというのは無駄も甚だしい。そこで台車にプリンタを載せて必要な場所に移動させてケーブルをつなぐとか、逆にプリントアウト専用PCを用意して、そこにデータを入れたフロッピーディスクを持って移動するとか運用で逃げるという解決案はあるものの、「面倒」という欲望は製品を進化させる。
かくして、複数のPCから1つのプリンタを共用できるようにする製品というものが登場する。ちなみに日本でこのプリンタ共有のソリューションを手掛けて大きくなったのが、誰であろうBuffalo。当時はメルコという社名でBuffaloはブランド名だったが、同社の40年史を見ると、1980年にプリンタバッファが大ヒットし、これを足掛かりにPC業界に参入したことが書かれている(ちなみに米国などでも当然同じ製品が出ていた)。これがある意味、PCにおける最初のNetworkである。
もっともこれは純粋にプリンタを共有するだけで、なのでデータはPC→プリンタの1方向通信でしかない。ただPCが増えてくると、お互いにデータ共有したいというニーズが出てくることになった。背景にあるのは、HDDを搭載するPCが増え始めたことで、もはやFDDではデータ交換が簡単に行えなくなったということが挙げられる。
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