ITmedia NEWS > 企業・業界動向 >

GIGAスクールのiPad授業、実際はどんな感じ? 墨田区錦糸中学校が実践していること(3/4 ページ)

» 2022年04月26日 14時58分 公開
[弓月ひろみITmedia]

学力テストの成果にも期待

 続いて、授業を担当した社会科の古賀隆一郎先生にも話を聞いた。古賀先生は現在は学年主任も務めている。ニュース番組を制作する授業は6時間目まで用意されており、最終的には鑑賞・評価までが含まれているそうだ。

 「授業のテーマは南アメリカですが、これについて、自分で調べよう・大事だから覚えてね、ではなく、“動画を作ろう・ニュース番組作ろう”ということで、生徒のモチベーションが自然と上がります。良いものを作ろうという意識が高まるんですね。動画制作中も班員と活発に意見交換し、分かりやすい表現を探るようになるため、対話的学びになるんです」

 同じ研究テーマを扱うにしても、ありがちなプレゼンテーションではなく ニュース番組にすることで、分かりやすい説明を意識するようになる。創造するというアウトプットが、深い学びの実現につながっているわけだ。

 1人1台のiPad教育を進める中で、生徒の社会科に対する反応も変わってきたようだ。

photo

 「社会科って役に立たないよね、から、身近なところにあるんだね、と捉えられるようになったようです」

 古賀先生は、iPad教育が導入される以前も、授業で振り返りシートを用意していた。だが、過去の生徒たちはいつも「覚えたい」という感想を残していたという。

 「今は、自分で調べたから、苦労したから、発信したから、気づかないうちに覚えられるようになっている。ここが、従来の授業との差ですね」

 また、昨年、オセアニア州の授業の際には、錦糸中学校と、杉並区の中学校、ツバルの総領事館の三者でオンライン交流授業を行ったという。テーマは地球温暖化だ。

photo

 「教師に教えて貰うのではなく、自分達が何ができるかを発信・表現することを中心に授業を行いました。ロイロノートスクールで発表原稿の作成と共有をし、交流当日はTeamsのオンライン会議を利用して交流しました」

 どうやってこの授業を実現できたかについて古賀先生に尋ねたところ、実は、前職の同僚に声をかけ実現したものだという。

 「墨田区にいらした先生が、杉並区に移動されたのですが、一緒に授業をやりませんかとお声がけをしたところ、ぜひ、というお返事をいただいたんです。ツバルの大使館には、私が直接電話して交渉しました」

 先生の熱意も高く、生徒達に取ってはかなり充実した授業内容だが、気になるのは、試験の方法だ。こうした学びを評価につなげるため、どのような方法を取っているのだろうか。

 「錦糸中学校では、基礎学力をあげるための学習コンテストを実施しています。モノグサというアプリで、iPad上で最初から最後まで、演習からテストまで実施しました。従来は紙の印刷と採点の手間がありましたが、この新しい形になることよって教員の負担も減りました。生徒達の記憶の定着率も分かるので、生徒達が頑張っている様子が確認できるのも良いポイントです」

 古賀先生は、こうした取り組みを進めることで、来年度、区の学力テストなどで成果が出るのではないかと期待しているそうだ。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.