最後に墨田区教育委員会の宮本知幸氏に、GIGAスクールの取り組みについて伺った。
墨田区の区立小学校は25校・児童数は約1万人、中学校は10校・生徒数は約4000人。その全員に、1人1台のiPadを配布している。予算規模は令和3年(2021年)で1200億円。機種選定に当たっては、配布することが目的にならないよう、活用に重きを置いたという。
最終ゴールは“みんなが笑顔になれる端末を導入する”こと。児童・生徒が直感的に作業ができ、操作マニュアルがなくても気軽に使える端末であることが第1の条件だった。
次に、子供たちを取り囲む、大人のために、特別なスキルがなくても、簡単に管理できることを条件にした。丈夫で壊れないことも大切だ。パソコンが苦手な先生や、障害をもっている子どもでも、楽しく使えることが重要と考え、GIGAの意味合いでもある「教員も、子供たちも誰1人取り残さない」ため、全ての人たちが笑顔になる端末としてiPadを選んだ。
配布直後は「いきなり配られてもこまる」「何をしたらいいのか分からない」という声が聞かれたが、「できるところから無理なく、少しでも」を合言葉に、iPadを使って学ぶ習慣を身につけ、今は効果的な使い方に向かって、ICTを深い学びのツールとすることを目標としているという。
学校の廊下なども見て回ったが、GarageBandを使ってオリジナルチャイムを作る、2年生の授業の成果が掲示されていた。
作詞・作曲から、譜面に起こすアプリを使ってのデータ化もされている。全ての学年で、非常に自然な形でiPadを使ったクリエイティブな学習が浸透しているのだと感じられる。
取材中に通りかかった教員が教えてくれた、こんなエピソードもあった。
「iPadは、黒板への板書がなくなるので、実は先生方の授業の簡素化にもつながっているんですよね。以前は毎回新しく書き込まなければなりませんでしだか、今はKeynoteをモニターにつなげたり、ロイロノートで共有すればよい。これが、負担軽減にもつながっているんです」
教師と生徒がともに学び、高めあい、効率化にもつながる、墨田区と錦糸中学校のような取り組みが多くの学校に広まることを願ってやまない。
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