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イーロン・マスクが唱える「自由なTwitter」の功罪 買収がもたらす“変化”とは(1/3 ページ)

» 2022年04月30日 10時00分 公開
[西田宗千佳ITmedia]

 イーロン・マスク氏が、Twitterの全株式を買収し、運営に携わることとなった。買収は年内に完了し、その後は非上場化が行われる、と見られている。

 マスク氏は「Twitterは街の広場のようなもの」とコメントしている。すなわち、誰もが自由に話せるべき場所にしたい、という考えだ。

 では、この「自由」とはどんな意味を持つのか。シンプルに実現されるものならばいいのだが、過去に起きたことを考えると、そこまで話は単純ではないだろう。

 筆者が考える「可能性と懸念」をまとめて見たい。

マスク氏の狙う「Twitterのオープンソース」的運営

 マスク氏の狙うところはシンプルだ。

 現状のTwitterはオープンではないので、それを改革することで自由な対話空間を作ろう、ということだ。

 それを象徴しているのが、「Twitterのアルゴリズムをオープンソース化する」という点である。

 この点については、Twitterの創業者であるジャック・ドーシー氏も「Twitterは使う、もしくは使わないアリゴリズムは誰にとっても開かれているべきだ」と反応している。

 現在のTwitterは昔ほど単純ではない。

 標準設定の状態では、投稿された順にツイートが並ぶ訳でもない。2016年以降、TwitterはアルゴリズムによってTwitterが「その人に合っている」とするツイートが目立ちやすいよう並べ替えるようになっており、間には広告も挿入される。「トレンド」として注目されるものがピックアップされる結果、トレンドに関するツイートはより増え、言及量が増えてさらに注目が集まる。ヘイトスピーチや医学的に正しくない情報には印がつく。

 また、「不適切」とされるツイートを繰り返した場合はアカウントの凍結などが行われるが、その基準とプロセスも明確にはなっていない。国や地域によって認識に違いがあっても不思議ではないが、そうした違いがどうなっているのかも分かりづらい。

 オープンソースになったからといってすべてがクリーンになるわけではないが、少なくとも「どのようなアルゴリズムで動いているのか」は可視化できるようになる。

 そして、マスク氏は、Twitterの買収をSEC(米国証券取引委員会)に届け出た翌日である、4月14日にトークイベント「TED」に出演し、その中で次のように述べている。

 「GitHubに学ぶことができます。誰かが『ここは問題だ』といい、別の誰かが『いや、そうではない』という。Linuxなどと同じように、問題を強調して変更を提案できるわけです」

 すなわち、単に可視化するだけでなく、そのアルゴリズムの妥当性についての議論も可視化し、改善を進めていけるのがポイント、ということだろう。

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