近くから遠くへ視線を動かすと、ぼやけていた風景がはっきりと見えるようになる──現実世界で当たり前のことが、VR空間でも普通になるかもしれない。NHK放送技術研究所(東京都世田谷区)は、物体からの反射光を実世界と同じように再現する「ライトフィールドヘッドマウントディスプレイ」を開発した。
映像を映し出すディスプレイ部の前に小さなレンズを多数並べたレンズアレーを配置し、個々のレンズに対応した「要素画像」と呼ばれる小さな被写体の映像を表示することで、ディスプレイより遠くに虚像(3次元映像)を映すHMD。実世界と同じように3次元シーンの光線を再現するため、手前の被写体を見ているときは遠くがぼやけて見え、奥に視線を移せば奥がはっきりと見えるといった自然な見え方になるという。
従来のHMDは視差のある映像で立体感を得ているが、目の焦点はディスプレイに合うため不自然な知覚となり、視覚疲労が起こると考えられている。対してライトフィールドHMDでは被写体の奥行きに応じて目の焦点位置が無意識に調整されるため、視覚疲労の抑制も期待できるとしている。
HMDの外形寸法は182(幅)×113(高さ)×127(奥行き)mm。画素数は1440×1440ピクセル(片目当たり)で、フレームレートは60fps。要素画像群はHMDの動きに合わせてPCなどで生成する。
NHK技研は今後、レンズアレーなどの光学系をブラッシュアップして3D映像の品質を高めると同時に、評価実験などを通じて表示特性などを検証し、より快適なVR視聴デバイスの開発を目指す。
試作機は5月26日から29日まで実施する一般公開イベント「技研公開2022」で一般公開する。入場は無料(事前予約制)。
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