今回の超歌舞伎には、ポイントとなるいくつかの要素があったと思うのですが、そもそものアイデアは、どこから始まったのでしょう。
横澤 コロナ禍の中で、家にいる時間が長くなると、ついいろいろ難しいことを考えるじゃないですか。だからこそ、見やすくて、シンプルに気持ちが昂ぶるような歌舞伎が見たいなと思ったんです。
それで思いついたのが、歌舞伎でヒーローショーをやりたい、今世紀最大のヒーローショーができないかと考えたんです。僕が好きな歌舞伎って、荒事というか、シンプルな勧善懲悪が真骨頂だなと思っていて。やっぱりヒーローがヒーローらしく登場するのを、見事に様式化した、これが歌舞伎だ! というのを見せたかったんですね。
竜をスクリーンだけで見せるのではなく、作り物でも出すというのも、やっぱり、戦うならリアルな絡みも必要だし、その補完として映像もあって、その両方があって、絵がキレイに見えるんです。
ヒーローショー的な演出と歌舞伎的な見せ方がピッタリとハマっていました。
横澤 江戸の人たちが、今の技術があればやっただろうということ、先人たちが作りたかったであろう景色を作りたかった。ただ、それに本気で取り組もうと考えたとき、今までの舞台機構や投影技術が邪魔に思えたんです。
6年間、超歌舞伎をやってきて、できることとできないことが分かってきて、でも、それでは、僕が見たい景色ができないということに我慢ができなくなってきて、それで、今まで積み重ねてきた技術や舞台機構を全部やめちゃった。ゼロベースから超歌舞伎を作り直すことにしたんです。
一番、違っていたのは、舞台の構造と、初音ミクの見え方でした。これまでで一番、ミクさんと、他の俳優さんたちの距離が近かったように思います。
横澤 はい。もともと、ミクさん見せ方というのは、僕なりのこだわりがあったんです。スクリーンを使った演出をずっとやってきたけど、それは直射光と反射光では、人がそれを見たときの認識の仕方が変わってくるという話を本で読んだからなんです。
ミクさんの輪郭を認識してほしくて、無意識で見ている人がミクさんを、そこにいる人として認識できるというのが、ファンからすると凄く重要だと思って、投影技術を磨いてきました。でも、今回、直接光にしたんです。1.9mmピッチの高解像度のLEDを使って、ミクさんを直接見せるという方法です。
映像自体に陰影を付けることでミクさんを見せるようにしました。僕自身、これは賭けだったんですけど、結果的に、俳優さんたちとの距離を近くできましたし、紗幕との組み合わせも効果を上げたと思います。
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