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「歌舞伎でヒーローショーをやりたい」 中村獅童+初音ミクの超歌舞伎「永遠花誉功」ができるまで ニコニコ超会議統括プロデューサーに聞いた(4/5 ページ)

» 2022年05月27日 12時47分 公開
[納富廉邦ITmedia]

獅童オリジナル「煽り六方」はいかに誕生したか

舞台構成では、揚幕(舞台から見て花道の突き当たりに掛けられた幕。勢いよく開け閉めするとチャリンと音がして、観客はこの音で俳優が花道から出てくることがわかる)が前を向いていて、花道が本舞台の横にあって、舞台自体も枠を作って間口を狭くしている構造になっていました。それが、歌舞伎らしさとスピード感を同時に実現していたように思います。

横澤 揚幕は、まあ、仕方ないというか、あれしかなかったというか。でも、揚幕が開くと、そこにもう俳優がいるというのは良い絵面になりました。

 ただ、あれだと、花道を去っていく時の「六方」(主人公が花道を去っていく際に使う、踊りのような歩法。「勧進帳」の最後で弁慶が花道を去る際の「飛び六方」が有名)が決まらないんですよ。ただ、そのおかげで生まれたのが、今回、獅童さんが最後に引っ込む時に見せてくれた「煽り六方」です。

 あれ、実は本番の前日に生まれたんです。最後の幕切れが上手く決まらなくて、本番前々日のテクニカルランスルーの時に、ずっとみんなで悩んでて、じゃあ、普通に幕を閉めちゃいましょうみたいな話になって、やってみたら、ちょうど最後は桜の花のプロジェクションマッピングなので、幕を閉めたら、上手からだんだん桜が咲くような感じになっていいね、となったんですけど、今度は、閉めた後の獅童さんがやることがないんです。

 じゃあ、みんなのコメントを出して、それを一緒に眺めるのは、余白も生まれて、良いかなと、もうお客さんに委ねちゃおうと思って、後は、明日のみんなに期待しようとか、獅童さんのハケ方は明日考えようとか言って、その日は寝たんです。

 で、翌日、まあ、六方で去るのが、歌舞伎的な演出かなとか思って、獅童さんにやってもらったら、「こうやって煽りながら六方する方がカッコよくない?」ってやってくれて、そこで生まれたんです。あれ、多分、劇場公演では、さらに凄いことになると思いますよ。

photo 今回、登場人物も多く、華やかな踊りのシーンも増えているが、初音ミクの踊りも明らかにパワーアップして見えた

そういえば、ミクさんの踊りが、明らかに上手くなっていましたよね。

横澤 やっぱり、高精細になったことで、認識しやすくなってるんですよ。着物の揺れとか、顔の表情とかがハッキリ分かるようになりました。

 もともと、そのくらい作り込んでいたんですけど、今回、それをLEDのおかげで、ちゃんと見てもらえるようになりました。後、今回は、俳優さんに当たるピンスポと同じサイズの丸いスポットの映像を作って、それでミクさんの影を演出しています。

 そうすることで、俳優さんと一緒に舞台に上がっているように見えるんです。その辺は、今回、相当がんばってやりました。とにかく、レイヤーにこだわって、複数の紗幕やLED、本舞台と花道、舞台の奥、何十とレイヤーを作って、細かく計算してます。

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