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気がついたらデジカメの超高感度が“使える”時代になっていた──ISO今昔物語荻窪圭のデジカメレビュープラス(2/3 ページ)

» 2022年07月15日 08時00分 公開
[荻窪圭ITmedia]

 あの頃は状況に応じていかにISO感度を抑えつつ露出を決めるかに頭を悩ませてて、シャッタースピードと絞りとISO感度の3つダイヤルが欲しいと思っていたものである。

 ペンタックスがISO感度優先オートなるユニークな撮影モードを搭載してくれたのは「K10D」(2005年)だった。ISO感度と絞りとシャッタースピードの3つを等価に扱ってくれたのが素晴らしかった。

ペンタックスのK10DはSv(感度優先オート)やTAv(絞りとシャッタースピードを決めるとISO感度が自動的に決まるモード)を搭載

イメージセンサーの進化とともに高ISO感度の時代へ

 でもその後、イメージセンサーがCCDからCMOSセンサーへ移行し、高感度時の画質もどんどん上がっていった。

 一般に、センサーサイズが大きい方が高画質といわれる。

 原則としてはそれでいいけど、正確にはちょっと違う。

 大事なのは画素サイズなので「同等の画素数であればセンサーサイズが大きい方が高感度時の画質はいい」だ。画素数が同じならセンサーサイズが大きい方が画素サイズも大きくなるから。

 さらに正確にいうと、センサーや画像処理エンジンの「世代」によっても違う。

 画素と画素の間隔を「画素ピッチ」と呼ぶけれども、その間を全部画素で使えるわけじゃない。実際には周辺に回路があったり、隣の画素と干渉しないよう手立てが施されているし、うまく画素(フォトダイオード)部分を効率よく使うようマイクロレンズが付いていたり……まあややこしいのだが、そこはどんどん改良されており、同じ画素ピッチでも、裏面照射型にしてより広い画素サイズをキープする、さらに積層型にして回路を裏に持っていくことで画素サイズを大きくするなど、どんどん技術が進んでるのだ。

ソニーセミコンダクタソリューションズグループのサイトにある積層型イメージセンサーの概念図より。積層型構造によってより画素領域を広くとれるようになった

 同じ画素ピッチでも昔と今では性能が全然違うのである。

 さらにノイズを抑える技術やセンサーから出力される信号を処理する技術も発達してる。つまり「同等の画素数でなおかつ同等の技術世代のセンサーであれば、センサーサイズが大きい方が高感度での画質はいい」なのである。

 ただ、実際には技術の発達が画素数の増加にも使われており、600万画素が1600万画素に、さらに2400万画素にと上がった分画素サイズも小さくなってるので、一概にはいえないとこもある。

 でも画素数が上がると同時に遥かに高いISO感度を使えるようになったのは確かだ。10年前の2012年、たまたまISO12800で撮った写真が出てきたので見てみよう。

 1つはAPS-Cサイズで1600万画素のソニー「NEX-5N」(2011年発売)。

 1つはマイクロフォーサーズで1600万画素のオリンパス「E-M5」(2012年発売)。

 分かりやすいよう部分拡大し、左がRAW、右がJPEGで並べてみた。画素数は同じだけど、センサーサイズが小さなE-M5の方がノイズが多いってのがRAWデータを見ると分かる。でもがんばってる。10年前のカメラだしな。

2012年にソニーのNEX-5Nで撮った蝉の羽化シーン。左がRAWデータ(細かいノイズがのってる)、右がJPEG(ノイズは消えているがディテールが少し曖昧(あいまい)に
2012年にオリンパスのE-M5で撮ったアブラゼミ。左がRAWデータ(細かいノイズがのってる)、右がJPEG(ノイズ低減処理がかかっている)

 RAWとJPEGの2つ並べたのは、細かいノイズがいっぱいのってるRAWデータをカメラ内で現像してJPEG化する際、どれだけ賢くノイズ低減処理を頑張るかが大事ってのが分かるように。

 実はこの頃は、ノイズはうまくつぶすけど、その分ディテールがもやっとするのが気になってたのだ。

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