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気がついたらデジカメの超高感度が“使える”時代になっていた──ISO今昔物語荻窪圭のデジカメレビュープラス(1/3 ページ)

» 2022年07月15日 08時00分 公開
[荻窪圭ITmedia]

 先日、ミラーレス一眼の時代になり、AF性能や機能が格段に進化したことで、かつては常識だったAFテクニックも必須ではなくなってきたって話をしたのだけど、技術の進化で常識が変わることは結構ある。

 例えばISO感度(ISOは国際標準化機構のこと。国際標準として定められた感度という意味)。デジタルカメラがフィルムカメラ時代の常識をいろいろと覆してくれたのだけど、大きなものの1つが「1枚ずつISO感度を変えられること」だった。

Nikon D40(2006年)のISO感度変更画面。この頃は最高でISO1600。その上は拡張ISO感度扱いだった

 フィルムカメラの感度ってフィルムごとに決まってるから、ISO100のフィルムをセットしたら撮り切るまで、ISO400のフィルムをセットしたらそれを撮り切るまで、そのISO感度で固定なのが当たり前だった(増感現像、というのはあったけど、普通の人はそういう技は使わないし)。フィルムの感度も当初は手動でセットしなきゃいけなかったから(のちに、DXコードが用意されて自動的にセットされるようになった)、そこで間違えると大変だったけど、それはそれだ。

古いフィルムカメラは自分でISO感度(さらに昔はASAだった。値はISO感度と同じ)をセットする必要があった。これはそのダイヤル。ASAはアメリカ標準規格、ISOは国際標準規格

 でもデジタルカメラならISO感度をいつでも変えられる。

 イメージセンサーにISO感度って概念はないので、ISO100にしたときはISO100のフィルムをセットしたときと同じ露出で撮れる感度という意味なのだけど(だから当初はISO100相当、といってた)、イメージセンサー自体の感度は決まってるので、ISO感度を上げて撮るってことは、信号を増幅するってことで、信号を増幅するって事はノイズも一緒に増幅される。

 わたしが最初に買ったデジタル一眼レフはニコンの「D1」(1999年9月発売)なのだけど、ISO感度は200から最高でISO1600。ISOオートはなく、自分でセットする必要があった。

 このカメラ、ISO1600まであげると暗部に不自然なノイズがのるというクセがあり、実用的にはISO800までという印象だった。だから室内でフラッシュによる撮影が禁止された場所での撮影は苦労した記憶がある。

 これは2001年に「Macworld NYC」の基調講演で撮影したスティーブ・ジョブズ。ニコン D1でISO800で撮影。Macとデジカメを接続するデモをしようとしたけどうまく動作しなくて「をい」となったあの瞬間。

2001年7月。Macworld NYCの基調講演にて。ニコン D1で撮影

 2002年になると600万画素でISO6400まで上げられるニコン 「D100」が登場する。同じく2002年にキヤノンから出た「EOS D60」(60Dではなく、D60)は600万画素ながらISO1000までだった。

 この頃のイメージセンサーが、ニコンは当時主流だったCCDを、キヤノンはいちはやく自社開発のCMOSセンサーを採用していたが、当時はCCDの方が感度も発色も良かったのだ。

 D100もISO6400まで上げるとノイズがかなりひどかったがISO1600ならなんとか使えたので、それで撮ってる。

20年前、D100でISO6400で撮影した写真の一部。細かいノイズが全体にのってる上に、偽色のノイズもある
2002年7月、Macworld NYCの基調講演にて。D100でISO1600で撮影したスティーブ・ジョブズ

 今と比べると画素数が少ない分ノイズは目立つわけで、昔からデジタル一眼レフを使ってる人はISO感度とシャッタースピードと絞り値の3つを状況に応じてどう組み合わせるかを考えるクセがついてると思う。

 クオリティーを考えるとISO感度は上げたくなかったのだ。

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