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海賊版サイトの“タダ読み”被害額、コミック市場規模を上回る 総務省検討会が中間報告

» 2022年07月15日 13時30分 公開
[谷井将人ITmedia]

 総務省は7月14日、「インターネット上の海賊版サイトへのアクセス抑止方策に関する検討会」が現状をまとめた資料を公開した。2021年に海賊版マンガサイトでタダ読みされた金額は、試算可能なだけで1兆19億円に上るという。これはコミック市場の販売金額(6759億円)を上回る規模だったと試算している。

photo 総務省の取り組み内容

 19年の調査では違法マンガなどをダウンロードさせるタイプが主流だったが、現在はサイト上で違法マンガを読ませるオンラインリーディング型に移行していることが分かった。アクセス数上位のサイトはベトナムに拠点を置くものがほとんどという。

 総務省は海賊版サイト対策として、広告出稿の抑制、CDNサービスでの対策、検索流入の抑制の3点で業界へのヒアリングや検討を進めている。

 同省は海賊版サイトの収入源である広告収入を絶つため、広告事業者による出稿を抑制するのが有効ではないかと考えた。広告事業者へのヒアリングでは、広告出稿の抑制で閉鎖したサイトもあったという。

 一方、不法行為をいとわない海外広告業者の広告や、運営チームがサイトに直接設置したアフィリエイト広告などが増加するいたちごっこになっているという。広告掲載先の品質確保に向けたガイドライン策定や認証制度の確立などが行われているが、今後も継続的な対策が必要としている。

 Webサイトのコンテンツ配信を補助するCDNサービスでの対策についても検討している。CDNサービスを利用すると、サイト表示の高速化やアクセス急増への対応が可能になるなど海賊版サイトにメリットがあり、被害拡大につながる恐れも指摘した。

 大手海賊版サイトの多くは米CloudflareのCDNサービスを利用していることが分かった。CDNサービスの利用により、データ転送に掛かるコストが現実的なレベルまで下がると検討会はみている。

photo CDNサービスベンダーの対応状況

 検討会がCloudflareへの聞き取り調査を行ったところ、同社はサイバー攻撃から身を守るCDNのようなツールは誰でも使えるべきであり、低価格での提供をやめても攻撃が増えるだけであると主張。一方で、苦情申し立てや紛争解決のための仕組みは用意しており、総務省や権利者との対話も継続していると話したという。

 Googleなどの検索サイトからの流入を抑制する対策についても検討している。調査によると、大手海賊版サイトにおける検索流入量は10%を切る一方、発展途上のサイトでは約25%を占めているという。総務省は、サイトの成長に大きく寄与していると分析した。

 また、検索サイトに対する違法コンテンツの削除申請については、ドメイン全体ではなくURL単体での申請しかできないことが多く、作業が膨大になってしまう。削除申請が重なると、検索結果に表示されにくくなるとされているが、条件や効果が不明瞭という問題もあるという。

 これに対し、ヤフーは非表示にする基準を公表。米Googleは大量に削除申請する権利者向けの効率化ツールを用意している。両社とも、サイト全体やドメイン単位での非表示措置については慎重な姿勢を見せている。

 総務省は各業界の取り組みにより、海賊版サイトへのアクセス抑制で一定の成果が見られると評価した。一方、サイトが削除されても後継サイトや模倣サイトが多数存在し、効果的なアクセス抑制には海賊版サイトのエコシステムを多角的に分析することが重要としている。

 海賊版サイト対策を巡っては、内閣府でサイトへの接続を遮断する「ブロッキング」も検討されていた。総務省は「通信の秘密や表現の自由の保護、検閲の禁止などに留意して(検討を)進める」との姿勢を見せている。

 総務省は今回公開した資料について、8月18日まで意見募集をしている。

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