それはさておき、対話型AIの市場は成長し続けており、グローバルインフォメーションが発表した調査によると、世界の対話型AI市場の規模は2021年から2027年に16.8%成長し、184億ドルに達すると予測されている。チャットボットの開発が容易になり、コールセンターなど顧客サービスとして需要が増えていることが理由に挙げられているが、AIの精度が向上して自然な対話ができるようになれば信頼性が高まり、さらに活用されるようになるだろうとしている。
今後、AIの研究開発は人に信頼され、共感されることがポイントになりそうだ。6月に京都で開催された人工知能学会全国大会(JSAI 2022)では、「エージェント」「ヒューマンインタフェース」というカテゴリの一般セッションをはじめ、オーガナイズドセッションでは「人間と共生する対話知能」「信頼されるAIのためのインタラクションデザイン」「人間とAIの共存のあるべき姿を考える」といったタイトルが並ぶ。
AIとの信頼関係については、人とAIのほど良い関係のあり方を研究する国立情報学研究所の山田誠二教授が、人間がAIの性能を適正に評価することで最適な信頼を構築する適応的信頼較正理論を提案している。また、日立総合計画研究所からはAIが社会に受け入れられるために進められているTrustworthy AIの研究を紹介している。
一方でソーシャル・ロボットなどを研究する筑波大学の田中文英准教授は、言語を使わず人に気持ちを開いてもらう仲介者となるエージェントとして「OMOY」というロボットを開発しているが、現時点では言葉を話すAIよりもノンバーバルでリアクションするAIの方が、人は感情移入して意識を持っていると思わされるかもしれない。
そして、日本人の気持ちを理解して日本語で話す対話型AIを開発するには、教師データを集めることが必用になる。京都芸術大学は若者の恋愛相談にのってくれるチャットボットの対話セットを開発する教師データを収集する方法として、推しキャラを仲介役とすることでよりスムーズに本音を引き出すことができたと発表している。
前述した「OMOY」も仲介するのが人間でないことが、むしろスムーズなコミュニケーションを生み出すとしているが、もし将来的にAIが意識を持つようになるとそうした考え方にどのような影響を与えるようになるのか、気になるところだ。
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