「雪国」は川端康成が1935年ごろに発表した小説。冒頭の「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」が有名だ。この描写を絵にするに当たって、正解といえる正解はないが、本文の描写との整合性である程度評価できる。
「雪国」の冒頭には主語が明確に記述されておらず、英訳が難しい。AI翻訳ツール「DeepL」で翻訳すると次のようになる。
After passing through a long tunnel at the border, I found myself in a snowy country
主語として「I」(私)を付け足している。直訳としては大きく間違っていないが、雪国の冒頭としてはふさわしくない。この冒頭にはさまざまな解釈があるが、ここではいったん「主人公を乗せた汽車が国境にかかる長いトンネルと抜けると、そこは雪国であった」と読むことにする。
先ほどの英文をそのままMidjourneyに画像化させると以下のようになった。汽車に関する記述がないため、線路や駅、汽車などが描かれていない。これがこの問題の“ひっかけ”だ。
エントリーナンバー1はベテラン・サワ記者。生成した画像はこちら。
「日本、明治時代」という指示が強く影響したのか、日本家屋が映り込んでいる。右上の画像は資料写真のようなテイストだ。汽車については「a choo‐choo train,Wow!」という指示だが、Midjourneyはおそらくこの指示で線路を描いたと思われる。
サワ 「なんというかノリで。Wow! いい感じ」
エントリーナンバー2はゲームウォッチャー・カワ記者。作品はこちら。
こちらは、汽車側の視点になっている。筆者個人としては、雪国冒頭で浮かぶ場面は「車窓から見える日本の豪雪地帯」だったため、イメージが近い。
カワ 「見えるものをただ羅列するだけでなく、情景を端的に描写するイメージで指示してみました。『AAAゲーム』と入れたのは、『note』の深津貴之CXOのツイートを参考にしました。試してみたらいい感じでした」
おそらく、本来は指示に何かしらのAAAゲーム(大手・中堅パブリッシャーが販売・流通するゲーム)タイトルを入れることで、AIを上手にコントロールできるだろうという意図だと考えられる。MidjourneyのAIがどの程度「AAAゲーム」という単語を作画に反映させたかは不明だが、今回は「AAAゲーム」そのままでも通用したようだ。
エントリーナンバー3は若手オカ記者。作品はこちら。
Midjourneyの認識では「機関車」(locomotive)はディーゼル車なのかもしれない。1935年の日本でディーゼル車が走っていたかは定かでない。また、雪国のモデルといわれているトンネルは1路線分の幅しかない。
筆者も雪国部門にエントリーした。作品はこちら。
冒頭の記述はおおむね無視して、文章を読んで頭に浮かんだイメージの方を指示文にした。筆者の認識とはもちろん一致するが、車窓から見える風景に映る線路の方向が自分の乗っている汽車の方向と一致しない問題がある。
編集部での投票の結果、雪国部門の優勝者は……エントリーナンバー2、4のカワ記者と筆者が同率勝利となった。
いずれも汽車を外から見た視点ではなく、内から見た視点だ。
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