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ワンタップ操作を封じた完全ワイヤレスイヤフォン「1MORE EVO」を使い続ける理由分かりにくいけれど面白いモノたち(1/3 ページ)

» 2022年08月14日 05時30分 公開
[納富廉邦ITmedia]

 完全ワイヤレスのイヤフォンというのは、多分、オーディオ機器としてはかなり特殊というか、とても現代的な機器だと思う。構造的に、耳に収まるサイズに、音響部分とバッテリーと無線送受信の機能を収める必要がある。

 使用時に邪魔にならないのは良いのだけど、なくしやすく、落としやすい。装着したままでの人と対応するときのマナーが気になるが、着脱にはケースを経由する必要があり手間がかかる。連続使用時間がさほど長くない……などなど、そう簡単には解決できないデメリットを抱えている。

 にも関わらず、その便利さには替えられない「装着時の楽さ」で、つい使ってしまう。特に、マスク生活でイヤフォンを使いたいなら、完全ワイヤレスは必須と言えるだろう。

 つまり、完全ワイヤレスのイヤフォンはスマホとの組み合わせで家の外で使うという条件で、その真価を発揮するものなのだ。だからこそ、ノイズキャンセリング機能が重要視される。しかし、外で移動中に使うことが前提である以上、ある程度の外音は取り入れる必要がある。本気のノイズキャンセリング機能を求めるにしても、本気の高音質を求めるにしても、リラックスした音響環境を求めるにしても、完全ワイヤレスタイプは、全く向いていない。

 エレキギターを弾いていて思うのは、ヘッドフォンで大音量で弾くよりも、多少音量は絞る必要があっても、音の良いアンプを直接鳴らして弾く方が、何倍も気持ちが良いということだ。これは、同じく、作業のBGMにしても、高音質のイヤフォンより、そこそこの音質のBluetoothスピーカーの方が心地よかったりする。案外、音にとって空間は重要だったりするし、聴こえ方にも影響するのだ。

 それでも外出時には他に選択肢がないくらい必須なのが完全ワイヤレスイヤフォンで、だから、選ぶポイントや評価ポイントも、オーディオ機器の常識では計れないところがある。ソニーの「ウォークマン」が登場した時、音楽を外に持ち出すというコンセプトが新しかった。外の風景の中、外の音と音楽を混ぜて聴く体験は、とても気持ちよかった。だから、ウォークマンに付属していたヘッドフォンはオープンエア型だった。

 もちろん、安全性やら携帯性やらの問題で、密閉型を装着するわけにはいかず、そのための無理矢理ひねり出したコンセプトだったのかもしれないけれど、どこか閉じた趣味であった音楽を聴くという行為に風穴を開けたのは確かだし、だからこそ、ファッションアイテムとしても注目された。

 それが同時に音漏れ問題も引き起こし、外で使うイヤフォンはカナル型へと主流を移していくのだけど、それと同時に、ウォークマン時代の「イヤフォンや小型ヘッドフォンも、聴いてみると案外、音がいいね」という感じられ方から、「音は良くなければ」という方向へと進んでしまう。

 有線のイヤフォンで、ステージ用のイヤモニのように小型でなければならないものは、「小さくて音が良い」が重要になる。その場合、ステージでのモニタリングに適した音という「正解」があるため、選ぶのも難しくない。製品を作る方も、目標がハッキリする。

 では、完全ワイヤレスイヤフォンの「音が良い」は何だろう。よく「原音再現」とかいうけれど、では「原音」って何?という気もする。自然音をハイクオリティで録音して、それをそのまま再生する必要があるなら、原音主義は重要だ。もしかしたら、VRなんかでは、これがとても重要になるかもしれない。

 しかし、その場合は音質よりもむしろ空間再現性だろうし、ならばスピーカーに勝つのは相当難しそうだ。

 要するに、聴きたい音がちゃんと聴ければオッケーだろう。それよりもむしろ、操作性とか付け心地とか、デザインやらなくしにくさとか、カスタマイズ性とか、そういうことの方が重要に思える。

 その視点で見た時、1MOREの「EVO」がとても面白い製品であることに気がついた。

photo 1MORE INTERNATIONAL LIMITED「1MORE EVO」19990円。色は黒と白。重さはイヤフォンが5.7g、ケースが46.9g。ドライバは1DD+1BA搭載のハイブリッド。Amazonなどのオンライン限定で販売
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