4年ぶりに来日した米Microsoft創業者のビル・ゲイツ氏は8月19日、日本が主催する「TICAD8」(アフリカ開発会議)に向けたプレイベントの中で、豊田通商やNECなど国内11社から取り組みの紹介を受けた。新興国支援を続けるビル・ゲイツ氏は各企業の取り組みに賛同するとともに、「グローバルヘルス」(健康的な生活の世界的な実現)の重要性を訴えた。
ビル・ゲイツ氏は、新興国を中心に世界の貧困や病気などの解決を目指し、妻のメリンダ氏とともに「ビル&メリンダ・ゲイツ財団」を2000年に設立。世界最大の慈善基金団体であり、グローバルヘルスは同財団が掲げる目標の一つでもある。SDGsの活動の一環として日本にはたびたび訪れており、今回はコロナ前の2018年以来の来日となる。
ゲイツ氏は「我々のグローバルヘルスが意味するところは、世界中の子どもたちが健康な生活を送るチャンスを得られるよう支援すること。そして、これは2000年に立ち上げた時から、ゲイツ財団がフォーカスしている部分」と説明。「毎年、1000万人以上の子どもたちが亡くなっていたが、(活動により)2018年までにその数を半分の500万人に減らすことができた。そして、持続可能な開発目標の一環として、2030年までに、さらに半分に減らしたい」と目標を掲げる。
一方で、新型コロナの影響について「パンデミックで恐ろしい悲劇が起きてしまった。2000万人以上が亡くなり、経済的な損害や学習上の損失は計り知れない。特に新興国では医療制度が機能していない。(死亡率は)コロナだけが高いわけではなく、マラリアなどのワクチン接種率も下がっており、2009年の状態に戻っている」と指摘。パンデミックが開けた後も、グローバルヘルスの取り組みの再開が必要であり、それを突破するためにイノベーションの重要性を訴えた。
11社の中には、塩野義製薬やエーザイ、SARAYAといった化学・医薬品企業から、医療機器を手掛ける富士フイルムやシスメックス、現地でモビリティを展開するヤマハ発動機、ワクチン債を発行している大和証券グループなどが名を連ねる一方で、ITやテクノロジー分野で活動する企業も参加している。
その中で、固定翼ドローンによる血液輸送サービス「Zipline」への出資やトヨタのランドクルーザーを使ったワクチンの保冷輸送車両などを手掛ける豊田通商、ドローンとAIを活用してボウフラが発生する可能性の高い水たまりを検知するAIスタートアップのSORA Technology、ベータコロナウイルス属に対応するワクチン開発を「感染症流行対策イノベーション連合」(CEPI)と共同で実施しているNECもゲイツ氏にプレゼンした。
豊田通商についてゲイツ氏は「ワクチンを遠隔地/農村部に届けるのは大変だが、それでもワクチンが保存される形で届けなければならない。トヨタのランドクルーザーと冷蔵ユニットを使ってワクチンを届ける取り組みはとても素晴らしい。そして、ドローンは新たなアプローチとして出てきているが、驚くべきことに、ドローンはルワンダなどでも大きく成功している」とコメントした。
SORA Technologyの取り組みは「カッコいい事例。マラリアのライフサイクルは幼虫、ボウフラが湧くところから始まる。マラリアの撲滅には幼虫の段階で殺す必要がある」(ゲイツ氏)と指摘する。現在の駆除は、ボウフラが湧く/湧かないにかかわらず、水たまりに駆除剤を散布しており効率が悪い。「『ここは必要ない、あっちに行こう』と判断できることは素晴らしい。財団にもマラリアチームがあるが、とても有望だと思う」と評価した。
NECは「私の最初のキャリアで協力させていただいた。非常に素晴らしいリーダーでありパートナーであることを知っている」(ゲイツ氏)とMicrosoft時代のNECの功績を評価。「カバレッジの広いワクチンを作ろうとしているのは、まさにゲームチェンジャー」「NECのような企業には優れた研究者がいるので、こうした素晴らしい目的に向けて貢献してもらえると思う」と述べた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR