8月23日、文化庁は著作権法施行令の一部を改正するとして、パブリックコメントを開始した。内容は、録画補償金の対象として、ブルーレイレコーダーを追加指定するというものであり、ITmediaでもすでに記事になっているところだ。
筆者はインターネットユーザー協会の代表理事として、2015年から2019年まで、文化庁文化審議会著作権分科会の「著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会」の専門委員を務めた。この小委員会こそ、録画録音補償金制度の在り方を議論する場であり、まさに筆者は今回のような補償金問題の「中の人」であった。
今回の改正案は、「中の人」から見ると相当に筋が悪いものに見える。その理由を解説したい。
「著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会」では、文字通りインターネット時代に対応した著作物の保護と利用のバランスはどうあるべきかを中心に議論してきた。ここに2015年、すなわち筆者が委員になって最初の委員会で、主婦連と合同で発表した資料がある。
これは7年前の将来予測であるが、今の視点から見てもおおむね当たっているはずだ。つまりサブスクサービスの台頭と厳しいコピー制限により、私的複製は激減することは明らかで、複製行為を主眼としたクリエイターへの対価還元制度はもう機能しないことは、その時点で見えていた。
その代わり、ユーザーの利便性が上がるのであれば、別の対価還元の仕組みは可能なのではないか。例えば放送のDRMを廃止する代わりに何らかの対価を払うシステムはあり得るのではないか、また対価をクリエイターへの直接還元にこだわらず、振興事業を起こす事で支援する方法もあるのではないかと結んでいる。
小委員会の議論は、主にクラウドサービスに対しての補償金検討を時間をかけて行なってきたが、筆者らが指摘したようにクラウドサービスでは私的複製が行なわれておらず、またスマートフォンに対してもほぼ私的複製をする実態が観測できなかった。スクショや画面録画機能がやり玉に上がった事もあったが、著作権が保護されたサービスに対しては実行できないため、補償金制度の対象外とされた。
新たなサービスや機器を補償金の対象にする場合、文化審議会著作権分科会の中で利害関係者を含めて合意形成が行なわれるのが通常で、過去DRMのない機器などでは議論されてきた。だが消費者としては、DRMで私的複製が制限されているのならば、補償金は不要との考えを譲ることはない。
今回のブルーレイレコーダーを追加指定するべきか否かについては、そもそもその前段階の「DRMと補償金の関係」について合意形成に至っておらず、同小委員会は2019年度を以て解散している。
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