理化学研究所などの研究チームは9月5日、昆虫に発電装置や通信機を搭載した「サイボーグ昆虫」を開発したと発表した。超薄型の有機太陽電池などの電子部品を取り付けており、昆虫の運動能力を損なわずに再充電や無線通信が可能という。これにより、昆虫の寿命が続く限り長時間かつ長距離の活動を可能にするとしている。
研究では、体長約6cmのマダガスカルゴキブリに着目。胸部背側に柔らかいバックパックを介し、曲面に沿って無線移動制御モジュールとリチウムポリマー電池を取り付けた。腹部背側には、ポリマーフィルム上に作製した厚さ4μm(=1000分の1mm)の太陽電池を搭載した。接着は繁殖環境(繁殖に適した高温多湿な環境)で1カ月間維持できたという。
太陽電池には、腹部の動きの自由度を確保するため接着剤領域と非接着剤領域を交互に配置する「飛び石構造」を採用。この有効性を示すため、障害物踏破試験と起き上がり試験で定量的に評価したところ、厚さ5μm以下のフィルムであれば昆虫の基本的な動作が損なわれないことを実証できたとしている。
昆虫に搭載した太陽電池の出力を調べたところ、昆虫腹部の曲面形状の有効面積を最大化することで、最大17.2mWの出力を確認。生きたサイボーグ昆虫のリチウムポリマー電池充電と無線制御にも成功したという。
サイボーグ昆虫は、人が到達困難な環境下でも長時間活動できるロボットとして着目され、研究が進んでいる。その制御を無線で長時間行う場合、10mW以上生成できる太陽電池などの発電装置が必要といわれている。しかし、デバイスが大きいほど昆虫の運動能力は低下するため、運動能力を保ちつつ10mW以上の出力ができる発電装置を搭載するのはこれまで困難だったという。
腹部の変形は多くの昆虫で見られるため、この研究で提案した飛び石構造はマダガスカルゴキブリに限らず他の昆虫種にも適用可能という。研究チームは「(この手法は)サイボーグ昆虫に効果的な設計である」とコメント。今後、より薄型の制御回路などを使うことで、サイボーグ昆虫の機能をさらに拡大できるとしている。
この研究成果は9月5日付の科学雑誌「npj Flexible Electronics」オンライン版に掲載された。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR