フロム・ソフトウェアが、2月に発売したアクションゲーム「ELDEN RING」のオンライン協力・対戦サービス提供に当たってAWSを採用した。ゲームは発売当初とそれ以降で同時接続数が大幅に変わることから、リソースを柔軟に調整しやすいクラウドを採用。マネージドサービスを活用することで管理の手間を減らし、現在は4人のチームで運用しているという。アマゾンウェブサービスジャパンが9月7日までに発表した。
フロム・ソフトウェアは2006年からオンラインでの対戦や協力が可能なゲームを提供している。当初はオンプレミスで提供していたが、12年にリリースしたゲーム「ARMORED CORE V」(アーマードコア ファイブ)からAWSに移行。ELDEN RINGでも採用した。
同社によれば、ARMORED CORE VやELDEN RINGのような買い切り型のゲームは発売直後に売れ行きが伸び、同時接続数が増えるものの、その後は徐々に利用が減っていくという。販売数が想定以上になると急いでサーバを増強する必要があり、販売数の予測も難しいことから、オンプレでは対応しにくかった。
ITエンジニアに掛かる負担の問題もあった。同社では、エンジニアが複数のゲームの運用を受け持っており、単一のゲームだけにリソースを注ぎにくかった。そこでクラウドサービスを採用し、サーバの規模を拡縮しやすくした。マネージドサービスも活用することで、エンジニアの負担も減らしたという。AWSを選んだ理由は「技術情報が豊富で、自社でノウハウを得やすい点が決め手になった」(フロム・ソフトウェア)
ELDEN RINGでは、クラウド計算環境「Amazon EC2」や負荷分散を行う「Elastic Load Balancing」を活用してサービスを提供。ELDEN RINGは当初の想定より同時接続数が多かったものの、AWSを活用したことで柔軟に対応できたという。
フロム・ソフトウェアは当初、リリース直後の同時接続数を20万程度と見込んでいた。しかしリリース2カ月前の時点で40万程度になる可能性が浮上。1カ月前の時点では100万程度になる可能性も出てきた。実際、リリース直後は同時接続数が100万、2週間後には150万以上になったが、アマゾンウェブサービスジャパンと協力し、サーバの規模を柔軟に拡縮することで対応できたという。
他にもログ収集サービス「Amazon Kinesis Data Firehose」やデータ可視化ツール「Amazon OpenSearch Service」を採用し、サーバへの接続人数などの可視化・分析に活用。従来はログ収集に起因する障害が月に数回発生していたものの、ELDEN RINGではほぼゼロに減らすことができたという。これによりエンジニアの手間も減り、4人チームでの運用が実現したとしている。
フロム・ソフトウェアは今後もAWSやそのマネージドサービスを積極的に活用する方針。クラウド向けリレーショナルデータベース「Amazon Aurora」やCDN(コンテンツ・デリバリー・ネットワーク:複数の別サーバがサーバ本体に代わってコンテンツを配信する技術)サービスの「CloudFront」を活用し、オンラインサービスの改善を進めていくとしている。
ELDEN RINGはPlayStation 5、PlayStation 4、XboxSeries X|S、Xbox One、Windows(Steam)向けの高難度アクションゲーム。フロム・ソフトウェアによれば、ダウンロード版・パッケージ版を合わせた全世界累計出荷本数は1340万本以上という。
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