スマートフォンゲームの周年イベント。新しいキャラクターやゲームモードなど、新要素をリリースしやすく、制作側にとっては話題を集めやすいタイミングといえる。一方で、平時より多くのプレイヤーによる瞬間的なアクセス増加が発生する可能性もあり、通信インフラに気を配らなければならない場面でもある。
スマホゲーム「バンドリ! ガールズバンドパーティ!」(ガルパ)を提供するCraft Egg(東京都渋谷区)も、この問題につまづいた企業の一つだ。同社はゲームの提供基盤にAWSを取り入れていたが、負荷試験が不十分などの理由で、3周年と4周年のイベント時に、それぞれアクセス障害を起こしてしまった。周年当日にもかかわらず緊急メンテナンスをせざるを得なかったという。
この反省を踏まえ、Craft Eggは負荷試験の改善を実施。2022年3月の5周年イベント開催時には、プレイヤーのアクセスをさばききることができた。現在は23年3月に迫る6周年に向け、さらなる改善を進めている最中という。
Craft Eggは、2度の失敗を踏まえてどのようにアクセス障害に備えているのか。同社が体験した失敗と改善策について、同社の常山貴行さん(バックエンドチームリーダー)と高川雄平さん(バックエンドチーム)が、ゲーム開発者向けのオンラインイベント「CEDEC 2022」(8月23日〜25日開催)で解説した。
ガルパは2017年リリース。架空のガールズバンドやそのメンバーたちの活躍を描くリズムゲームだ。ユーザー数は国内だけで1500万人以上(22年4月時点)という。
最初に“周年の壁”にぶつかったのは、3周年イベントのとき。ガルパの周年イベントでは例年、前日のうちからメンテナンスを実施し、その間に声優などが出演する特別番組を配信している。
そして周年当日になった瞬間、メンテナンスを終了し、一斉にプレイヤーを受け入れている。特別番組で周年までのカウントダウンなどを行うことからユーザーを盛り上げられる一方で、日付が変わった瞬間に大量アクセスが集まるという。
例えば3周年イベント当時の場合、特別番組の視聴者数は4万人程度だった。常山さんによれば、メンテナンス終了から10分程度でスマホアプリの動作が遅くなる事態が発生し、緊急メンテナンスに踏み切らざるを得なかったという。
主な原因はAPIサーバへの負荷だ。ユーザーがログインするとき、システムを動かす前に必要なデータを取得するAPIに負荷が掛かり、APIサーバが対応しきれていなかった。他にも、使っていたコンテンツの分散配信技術(CDN)「AWS CloudFront」のリクエスト数の上限が足りていなかった可能性もあった。
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