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なぜ“今どきのオジサン”は「Z世代」に優しいのか小寺信良のIT大作戦(1/3 ページ)

» 2022年09月14日 09時00分 公開
[小寺信良ITmedia]

 ネットのニュースでもテレビのバラエティでも、Z世代はどうだとか、世代間ギャップがどうといった話を目にする機会は多い。「Z世代」とは1996年ごろから2010年ごろまでに生まれた人で、現時点で10代から20代中盤ぐらいまでを指す言葉である。X世代、ミレニアム世代(Y世代)と来て、その次なのでZ世代というわけだ。ちなみにZ世代の次は、アルファベットが最後まで行ったので、α世代というそうである。

 若者層のトレンドや消費動向を分析するということは、それこそ昔から行なわれてきた。若者層は情報伝達が早く、瞬間的に集中して一点に消費活動を行なう、すなわちブームを作るので、そこをうまく仕掛ければ、もうかるからである。低価格なスイーツやドリンクといった消費材はもちろん、自動車のような高額商品でも、残りの人生が長いのでローンも通りやすい。

 だが昨今のZ世代に関する論説を読んでみると、市場としての若者分析ではなく、Z世代の「人間そのもの」を理解しようと努めているように見える。

若年世代分析が続く理由

 今22歳前後の人口は、団塊ジュニアのピーク年齢人口を100とすると、60%程度である。それより下は徐々に少なくなり、10歳以下は50%を下回る。つまり若年層は人口も少なく、当然収入も少ないことから、購買層としてはもはやあまり期待できない事になる。

 2022年6月、パナソニックホールディングスの調査で、「パナソニック」の20代の認知度が、わずか53%であったことが明らかになった。同社では急ぎ、ブランドの強化を行なうという。

 その理由は、今の若年層が将来管理職や決裁権を持つようになったときに、ブランドが知られていなければB2Bマーケットで選択肢に上がっていかないからだ。20年後「パナソ……なんだって? 知らないメーカーは外しておこう」という判断があり得るという話である。

 ソニーは、スマホやゲーム機、イヤフォン/ヘッドフォンなど、若年層が欲しがるものを作り続けている。富裕層向けの高級モデルもあるが、手に入りやすい廉価商品も投入している。「中の人」に、なぜマーケットバリューが小さい若年層に向けて新製品投入を続けるのか聞いてみたことがあるが、個人的な考えだがと前置きした上で「これまでずっとそれを続けてきて、いったんやめてしまうとトレンドの連続性が分からなくなってしまうから」という事だった。つまり利益追求というより、マーケティング的な意味合いが強い、という事だろう。

 一方で、「ステレオ」の意味が分からない若い社員に、スピーカーをセールスしてもらわなければならないジレンマも抱えているという。どうやったら彼ら彼女らに「腑に落ちる」説明ができて、さらに新しい世代へ橋渡ししてくれるようになるのか。多くの企業でも同じ悩みを抱えているはずだ。

 大きくもうけたいなら、富裕層で人数も多い、75歳前後の団塊の世代だけ相手にしていればいい。だがぶっちゃけそのマーケットは、あと10年〜15年で消えてなくなってしまう。さあそれから次の層へ、と方向転換したところで、蓄積がなければ何をどう売っていいのか分からなくなる。

 会社組織の寿命は、人間の人生よりもはるかに長くなる。若年層から分析をはじめ、その世代を何十年もずっと追いかけて、その時その時に最適な提案をしていく必要がある。企業論理としては、そうなるだろう。

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