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なぜ“今どきのオジサン”は「Z世代」に優しいのか小寺信良のIT大作戦(3/3 ページ)

» 2022年09月14日 09時00分 公開
[小寺信良ITmedia]
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“今どきのオジサン”ならではの「気持ちがわかる悲しさ」

 オジサンがZ世代を理解しようとするのは、共感力だったり優秀だったり優しかったりする、だけではない。そこには、「気持ちが分かってしまう」悲しさがある。

 ここにちょっと乱暴な図を掲載する。縦軸が社会の成長、横軸に時間を据えて、社会成長の度合いをカーブで描いてみた。1965年ごろから始まった高度経済成長は、1990年ごろのバブル崩壊で終焉を迎える。それ以降は皆さんもご存じ「失われた30年」が始まる。ここ30年間、ほとんど社会は成長していない。

社会成長と世代間ギャップ

 現在44歳のオジサンが22歳だった2000年、当時の上司が同じく44歳だったとしよう。その上司が新入社員で入社したのは1978年で、高度経済成長期の一番いい時期にあたる。今のように情報社会ではないことから、勘と経験を頼りに手探りで金鉱を掘るみたいな社会だった。とはいえ、全てが右肩上がりで、イケイケでやってきたわけだ。

 そんな上司は、2000年にヒイヒイ言いながら入社してきた小僧の事情など、いちいち気に掛けない。自分が22歳だったころから比べものにならないレベルで社会が成長したため、自分の若い頃とは「全然違う」のだ。だから、若い子に共感できる要素がほとんどない。とにかく早く戦力になれ、こっちのやり方に合わせろ、でゴリゴリに進めてきたわけである。

 そしてそのときヒイヒイ言っていた22歳が、現在44歳のオジサンとなったわけだが、失われた30年をがっつり経験してほとんど成長しない社会で生きてきた。つまり自分の若い頃と今が、ほとんど変わっていない。昨今は100社にエントリーして1社も受からないみたいな話も珍しくないが、なんならその元祖が今のオジサン世代だったりしたのだ。

 今のオジサンは若い子の苦労や思うことが、「そうかー、そうだよねー」と、理解できてしまうのである。例えば「Z世代はLINEで句読点を使うのに違和感がある。なぜならばチャットとメールはコミュニケーションスタイルが違うから」と聞けば、「なるほどそうかー、そうだよねー」と理解してしまう。あるいは、「Z世代は前提も何もなくいきなり本題の質問をしてくる。なぜならばその後コミュニケーションを展開して細かいところは詰めていけばいいと思っているから」と聞けば、「なるほどそうかー、そうだよねー」と理解してしまう。平たく言えば、世代間ギャップが昔より小さくなってしまったために、年齢差があっても感じることがだいたい同じ、なのである。

 Z世代に忖度せず、大人のやり方を堂々と押しつけろという人もいる。だが、自分がそうやられてきて「そうじゃない」と思い続けた22年だったのだ。ある意味Z世代は、理解してくれるオジサン世代がいて助かったといえるかもしれない。ただこのZ世代が、続くα世代をどのように扱っていくのか。やはり世代間ギャップが狭いままなのか、あるいは理解不能な世代となっていくのか。

 それを見届けるまで筆者は生きていないかもしれないが、今の若者に優しいオジサンたちを見ながら、みんなが成長できて、他者理解のある優しい社会だったらいいなと思っている。

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