映画やドラマを10分程度にまとめた「ファスト映画」が注目を集める中、動画を高速で再生する“倍速視聴”の是非も、関連して話題になっている。ファスト映画については逮捕者が出て、これから法廷で問題点が争われることになりそうだが、いずれの視聴形式にも共通しているのは「時間の節約」という観点だ。
短い時間で作品を視聴することについては「演技の間が生む良さを損ねている」「コスパは良い」などさまざまな意見が出ている。中でも注目されているのは、10代や“Z世代”(1990年代半ば〜2000年代生まれ)の若者が、動画の倍速視聴を積極的に行っている、という論調だ。
確かに23歳男性(つまりZ世代)の筆者は、動画をところどころスキップしながら見たり、1.25倍速で再生したりすることがある。しかしこれは重要度が低い動画の場合だ。自分が好きなエンタメや“推し”コンテンツは等速が基本。年の近い同期や友人、後輩にも聞いたところ、多くが同じ見方だった。
となると、今度は「なぜ早回ししてまで重要度が低い動画を見るのか」という疑問が出てくる。友人らに詳しい実情を聞いてみたところ、その理由が見えてきた。
まず、コンテンツが多様化するあまり「誰もが見ているコンテンツ」がなくなり、若者同士も共通の話題作りに苦労していることが分かった。
誰でも動画や画像を投稿できるプラットフォームが無数にあるいま、コンテンツは飽和状態にあるといえる。飽和しているということは、それだけ選択肢があるということ。一昔前は「誰もが見ているコンテンツ」だったテレビやドラマも選択肢の一つに過ぎなくなり、若者の間でも「みんな知ってるアニメやドラマ」はなくなりつつある。
一方、SNSやマッチングアプリの普及は進み「知り合いのフォロワー」「顔とプロフィール文しか知らない誰か」とつながる機会は増えた。この人たちと仲良くなりたいと思うと、共通の話題が必要になる。
しかし、現代のコンテンツはあまりに多様だ。話題は「あのYouTuber」「あのアニメ」ではなく「あのYouTuberの先週の動画」「あのアニメの番外編」「あの映画のスピンオフ」単位まで細分化される。
こうなると、話題についていくために映画やアニメ、動画を視聴するには「第1章」「第1期」などは早回しするか、“作業用BGM”のように視聴したりせざるを得ない。「TiKTok」のようなショート動画なら話は別だが、話題がそれだけとは限らない。
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