一つは盛島CFOの存在だ。ベンチャーキャピタルから出向していた盛島CFOは、投資家側の動向を詳しく把握できており、資金調達に役立てられたという。「投資委員会(出資を決める場)のメンバーの名前や、誰が何票持っていて、誰が賛成しているか、反対しているかまで把握していたので、重要人物を直接抑えて交渉した」(盛島CFO)
もう一つは、過去に銀行からの融資を受けた経験があったことだ。5億円の融資について「何か駆け引きするより、過去の実績があったほうが融資が受けやすいといううわさがあるが、本当だった」とセーヒョンCEO。「『すごい少額だけどマジでこれやるの?』って金額でも、1回やっておいた方が後に大きい金額を借りるときもすんなりいきやすい」と振り返る。
実際、今回の融資についての動きは2月ごろから始まったが「過去の融資はもっと時間がかかった」(セーヒョンCEO)という。「ここで浮いた工数が今回の調達にとって大きいなと思っている。これから資金調達するのであれば、無駄に見えるかもしれないが、金額が安くても一回取引しておくのがいいと思う」(セーヒョンCEO)
一方、セーヒョンCEOは今回の資金調達について「準備なしで通過してしまった」と反省点を語る。特に、ユーザーのデータを収集・分析し切らないまま行動してしまったときに準備不足を痛感したという。
「ユーザーのデータや指標に対する考えを聞かれたときに『なんか成長してますが、考えたことはないですね』としか思っていなかった。さすがにそう答えるわけにはいかないので、後でロジックを組み立てたり、追加のデータを取ったりした。当時は結構焦っていた」(セーヒョンCEO)
「ユーザーがどれだけバーチャルオフィス内で動いているか、どれだけ発話したかといったデータの有無を聞かれたが、用意していなかった。次回の調達に向けて準備を進めるしかなかった」(盛島CFO)
社内の“暗黙の了解”を明文化しておらず、投資家に伝えきれない情報があったことも反省点という。「外部から指摘されて気付いたこともちらほらあった」とセーヒョンCEO。もしやり直せるのであれば、資金調達前に1〜2週間ほど社員と対話する時間を作り、成長の要因などを明確化しておきたいという。
紆余曲折の果てに45億の大型調達を達成したoVice社。同社は今回の資金を米国へのサービス展開や人材採用、マーケティングの強化などに充てるという。中でも米国への展開は重要事項といい、海外での売り上げを増やし、海外投資家の注目も集めたいとしている。
「市況を踏まえて下方修正はしたが、夢いっぱいの事業計画を海外投資家に持っていったところ『夢がない』といわれ、同意しつつも『これが海外か』と思った。日本のスタートアップとして拡大していくのであれば、それくらいの規模を見せていかないとキツいのかと感じた」(セーヒョンCEO)
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