真偽不明の情報が飛び交うネット空間を良くしようと、米Googleとヤフーの支援を受け立ち上がった「日本ファクトチェックセンター」(JFC)について、ネット上ですでに批判の声が上がっている。JFC側とネットユーザー側の温度感に、ボタンの掛け違いがありそうだ。
批判を受けている要素はいくつかあるが、“温度感の違い”というところでは「報道機関はチェックから除外」というJFCの方針に注目したい。
JFCがガイドラインで定めるファクトチェックの「対象言説」には「(4)正確で公正な言説により報道の使命を果たすことを目指す報道機関として運営委員会が認める者が発信した言説ではないこと」という取り決めがある。その後ろには例外規定もあるが、原則としては「報道機関は正確性・公正性に努めているから除外する」ということだ。
これはメディア側の論理とネット空間の健全性向上を考えれば一理あるようにも思える。つまり、メディアがウソを発信すればその看板に大きなキズが付くことは言うまでもなく、発信主体が分かりにくいSNSなどの情報よりは正確性が高い。ファクトチェックできる人的資源も限られる中、メディア発信以外の情報を精査することでネット空間全体の健全性を上げよう──という考え方と取れる。
ただ、これは「メディアはそう思っているだけ」で読者からはそう思われていないのが現状ではないだろうか。
確かにネット上には真偽の分からない情報もたくさんあるのだが、一方で特にSNSによるユーザー発信がもたらしたのは「メディアが発信した情報のファクトチェック」ではなかったか。よく、メディアの役割は権力の監視だといわれる。そのメディアを監視しているのがSNSという構造だ。
早い話が、ネット上には「記者より詳しいその道の専門家」がほぼ間違いなくいる。記者も記事掲載までには専門家などに必要な取材をするわけだが、最後は自分の言葉で文字にする以上、間違いや勘違いが起きることはある(それ以前のミスや思い込みもあるが)。ネットの集合知はそれを見逃さない。
そのようにネットがメディアを監視・検証する時代になってから、メディアの書くことをそのまま信じようと思う人は少なくなってきているのではないか。そんな中で「メディアの書くことは正確なのでそれ以外をチェックします」と言われれば反発が起きるのは当然だ。
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