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「FigmaはAdobeに統合される?」 Figma CEOに直撃、2.9兆円の買収提案に乗ったワケ(1/3 ページ)

» 2022年10月11日 11時00分 公開

 9月15日に発表された、Adobeによる「Figma」の買収には、多くの方が驚いたのではないだろうか。Figmaは日本語版も発表したばかりで絶好調。そこでAdobeが200億ドル(発表時点で約2.9兆円)という巨額での買収を行うと予測していた人はあまりいないと思う。

Figma共同創業者でCEOのディラン・フィールド氏

 Figmaユーザーの間では、買収がどのような影響を与えるのか心配する声も多い。すでにFigmaからは「今後も独立した経営を行なってく」との声明が出されているが、その真意はどこにあるのだろうか?

 ITmedia NEWSでは、Figma共同創業者でCEOのディラン・フィールド氏にインタビューを実施。今回の買収の背景と同社の今後について聞いた。

なぜ買収交渉に同意したのか?

――はじめに、Adobeとの買収交渉はいつから始まったのですか?

フィールド氏(以下敬称略) 正確な日付は確認しないといけないですが、3〜4カ月前だったと思います。

――Adobeとの合併を決断するに至ったきっかけを教えてください

フィールド 私たちは長い間、Adobeの大ファンであり、みなさんと同じように、私もAdobeのソフトウェアを使って育ってきました。私にとって、Adobeは常にインスピレーションを与えてくれる存在であり、私のクリエイティブな作業の大部分は、彼らのソフトで行われています。

 Figmaについて、多くの人は「Adobeのような会社だ」と思っているようですが、そうではありません。デジタルトランスフォーメーションに取り組んでいる人たちは、より多くのアイデアを得るために、ブレインストーミングやアイデア出しの方法を考えます。そして、アイデアが浮かんだら、それを現実のものにするためのデザインを模索します。その部分を担当するのが「Figma」です。

 デザインが決まったら、今度はそこからソフトウェアを作りたいはず。私たちの今後の取り組みは、その部分になります。デザインとソフト制作を結び付けるために、さまざまな取り組みを行っています。

 私たちは他にも多くのことに隣接しています。もちろん、クリエイティブなツールにも隣接していますし、生産性にも隣接しています。Adobeは、そうした分野への拡張やスケールアップに役立つと思われる機能をたくさん持っています。

 例えば、AdobeにはAcrobatがあり、これは驚くほど大きなシェアを誇っています。

 われわれはAcrobatを通じて、より多くの人にFigJamを配布し、それを獲得するためのチャネルとして活用することができると考えています。

 また、私たちのユーザーは、デザインしていく中で、画像・3D・ビデオ・イラストなども見たいと考えています。設計プロセスの中では、これら異なる形式のアセットを保持することが重要です。そこでは、Adobeのパワーが活用されることでしょう。

 これら全てのことをWeb上で実現し、コラボレーションできるようになります。そうすることで、多くの創造的な可能性が生まれ、世界中の誰もが創造性とデザインをより身近に感じることができるようになると考えています。

――Adobeによる買収の意向が発表されると、ユーザーからは良い反応だけでなく、ネガティブな反応もありました。あなたは疑問に答えるため、買収報道の翌日、Twitterの「Space」上でユーザーからの質問に直接答えていましたが、反応はどうでしたか?

フィールド そうですね、確かに。Figmaは、本当に情熱的なユーザーコミュニティーに恵まれています。私たちのソフトウェアを、時には週に40時間以上も使ってくれている人たちがいます。そんな方々にとって、Figmaはまるで「家」のようなものです。そこで何かが変わろうとしている、となると「どうなるんだろう」と思う人がいても仕方ないと思います。

 たくさんのツイートや反応に目を通しましたが、あまりの多さにいくつかは見逃したかもしれません。

 全ての反応は、想定内でした。ただそのことは、Adobeと話し合ってきた懸念事項でもあります。どうすればFigmaの素晴らしさを継続させられるか、さまざまな懸念事項を一つひとつ丁寧に考えてきました。

 その大きな柱が「自律性」です。私たちは自律的でありたい、Figmaであり続けたいのです。

 そのため必要なのは、全ていままで通り続けることです。その他にも、いろいろなことを計画しています。

 コミュニティーが反応したのは理解できます。彼らが心配するようなことは、全て計画したつもりなのです。

 しかし、私がコミュニティーの皆さんに言い続けているのは、私をただむやみに信頼してほしいということではありません。

 ただ、オープンマインドでいてほしいのです。

 そうすれば、今後数年間で、私たちは正しいことをするのだと証明できるはずですし、そのために一生懸命働くつもりです。

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