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「FigmaはAdobeに統合される?」 Figma CEOに直撃、2.9兆円の買収提案に乗ったワケ(2/3 ページ)

» 2022年10月11日 11時00分 公開

FigmaはMacromediaの道をたどる?

――日本でも、今回のニュースは大きな驚きを持って迎えられました。過去にあった、AdobeによるMacromedia買収を思い出した人も多いようで、買収後に更新が終了した「Fireworks」を引き合いに出し、Figmaも同じような結果になるのでは……と心配する人も多くいた印象です。そのようなことは起きない、と安心していいのでしょうか?

フィールド 私もFireworksユーザーでしたよ! 当時はデザインインターンで、Fireworksをよく使っていました。良いツールでしたが、バグもたくさんありました。

 私の理解では、AdobeはFireworksの更新を止めることを決め、問題を解決できるより良い製品を作ろうとしたのだと思います。もしFireworksの開発が中止されていなかったら、SketchやFigmaのような会社は存在しなかったと思います。

 元Macromediaの人たちの話によれば、Adobeに買収される前から、Fireworksの開発停止はすでに計画されていたそうなのです。Adobeがそれを受けて中止したかは分かりませんが。

 とはいえ、AdobeがMacromediaを買収したのは2005年のこと。Fireworksの開発中止は2011年か2012年のことだったと思います。ずいぶん長い時間がかかっています。

 また、現在Adobeを動かしている人たちは元Macromediaの人たちであり、Macromediaの買収について深く考え、結果としてなにが正しかったのか、なにが悪かったのか、どうすればコミュニティーに対して正しい行動を取れるのかを考えています。そして、デザイン・コミュニティーのことを本当に大切にしています。

9月15日の買収発表後「Fireworks」がTwitterトレンド入りした

 このことは、最近買収された「Flame.io」の件からも分かります。買収されても、彼らは独立を保っています。そしてAdobeも、Frame.ioの成功のために、できる限りの投資をしてくれています。Adobeの話を聞く限り、彼らはFigmaにも同じことをするつもりだと思います。

 それにですよ。すぐにサービスを止めるなら、200億ドルも払うのは止めた方がいいでよすね(苦笑)。

――なるほど。では、Figmaはどのようにプラットフォームとしての独立性を維持するのでしょうか?

フィールド まず当然ですが、重要なのが日頃の人間関係です。

 AdobeはFigmaがシングルプラットフォームであることを尊重しています。FigmaがCreative Cloudブランドになることを考えているわけではありません。多くの人がTwitterで冗談を言っていますが、われわれの間では、そのようなことは誰も言っていません。

 このように、Figmaの自律性を巡る動き、勢い、エネルギーは、非常に大きなものです。これは、従来の買収とは違うアプローチだと思うのです。

――Adobeとの競合状況についてお聞きします。彼らは「XD」を持っていますが、Figmaとはどうすみ分けるのでしょうか

フィールド 私たちは、よりWebとのコラボレーションに重点を置いています。そしてまた、私たちは製品設計とデザインシステムにもっと焦点を合わせています。だから、FigmaとXDは少し違いますね。XDがどうなるかは、Adobeに聞くしかないでしょう。買収が完了するまで、小さなチームを維持することを約束しているのは知っています。しかし、その後の計画については、彼らに聞いてみないと分かりません。

AIは「1990年代のインターネットのような状況」

――Adobeの買収による結果について、もう少し伺います。買収によって得られるものとして、AdobeのAI技術があります。これがFigmaに統合された場合、なにが可能になるのでしょうか?

フィールド 今、私たちはFigmaの当面のロードマップに集中しています。より開発者に近い部分で、デザインからコードに移行できるようにし、デザインをより簡単に構築できるようにすることです。

 ですがもちろん、将来になにができるのか、いろいろと期待していることはあります。

インタビューに応じるディラン・フィールド氏

 そうですね……先ほども言ったように、技術だけでなく、画像やイラスト、映像、3Dなどの専門知識をFigmaに取り込むことができるようになるでしょう。その結果として、プラットフォームは、本当に強力なものになると思います。

 現在は、AIとクリエイティビティが交わり、多くのイノベーションが起こっている最中だと思います。正直なところ、AIとあらゆるソフトウェア・ツールがどのように交わるのか、それは、創造性だけでなく、全てのことに関わってきます。そして、人間の仕事の未来について考えるとき、AIが「人の代替物」にならないことが、本当に重要だと思うのです。

 AIを使って自分をより良くするためにはどうすればいいのか? ユーザーが望む結果に到達するために、そのチームをより良くする存在になるべきなのです。

――AIはチームの1つのパートということですね? 誰かを代替するのではなく

フィールド そうです、チームの大きな一部なのです。それをどう活用するのか、AIについて世界的な議論が始まっているところだと思うんです。AIについては、1990年代のインターネットのような状況にあるのだと思います。

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