9月29日(米国時間)、Googleがクラウドゲーミングサービス「Google Stadia」(以下Stadia)を、2023年1月にサービスを停止すると発表した。
そこで多くのゲーム業界関係者が発したのは「残念」という言葉ではなく、「やっぱりか」「そうなると思っていた」というものだった。
2018年に発表され、翌年大きな注目を集めつつスタートしたStadiaだが、ユーザーからの支持だけでなく、ゲーム業界側からの信頼も得ることはできなかった。
それはなぜなのか? 少し考察してみよう。
Stadiaは俗に「クラウドゲーミング」と呼ばれるサービスだ。クラウドゲーミング自体は1990年代末から存在する概念で、現在も複数のプラットフォーマーが存在する。
仕組みは簡単。手元のゲーム機やPCでゲームを動かすのではなく、サーバ側で動かして「リモートで操作する」。手元の機器は映像配信を受信しているようなものなので特に高い性能を必要としない。Webブラウザからでも使える。だから、タブレットやテレビからでも、リッチなグラフィックを使ったゲームが遊べる。
結果として「ゲーム機やゲーミングPCを買わなくてもプレイできる」こと、「十分に速く安定した通信さえあればどこからでもプレイできる」ことなどが利点といわれる。
最近は、「プラットフォーマーの縛りを超えられる」という点がアピールされることも増えてきた。訴訟問題もあり、アップルのプラットフォームでは現状、Epic Gamesの「Fortnite」を直接プレイすることができないが、マイクロソフトの「Xbox Cloud Gaming」やNVIDIAの「GeForce Now」を介して、iPhoneやMacでもFortniteをプレイ可能になっている。
Stadiaも、先行する他のクラウドゲーミング同様の特性を備えている。ただその上で、有料プランの「Stadia Pro」では最高4Kの映像出力に対応していたり、Wi-Fi接続型の「遅延に配慮した専用コントローラー」を提供していたりと、特に品質にこだわっていたように思える。
すなわち、クラウドゲーミングの「ゲーム機を買わなくても遊べる」という部分を特に強く押し出したのがStadiaである、という言い方ができるだろう。
ただ筆者は、その押し出し方自体こそ、Stadiaが支持されなかった理由だろうと分析している。
クラウドゲーミングには遅延や不安定さがつきものだ。ネットを介することによる遅れはほんの0.1秒程度だが、ゲームの内容によっては不快に感じる場合がある。
また通信速度が変化すると、映像を表示するための転送レートが変動する。映像配信でも同じことは起きるのだが、映像配信と違ってゲームでは、映像を先読みしておいて変化を見えづらくする「バッファリング」技術が使いづらい。結果として、通信の不安定性はより顕著に現れる。
もちろんStadiaはそこに配慮して開発されているし、アメリカで筆者が(短時間だが)遊んだ経験でいえば、遅延や不安定さはそこまで致命的なものではなかったように思う。他のクラウドゲーミング・プラットフォームに劣っていたわけではないし、多少優れていた部分もあったろう。
一方、冷徹な事実として「そこまでやっても、目の前にあるゲーム機でプレイするより快適なわけではない」という点も指摘せねばならない。ゲーマーは快適さにこだわる。ゲーム機やゲーミングPCが支持されるのはそのためだ。
Stadia Proは月額9.99ドルだった。その料金の中で追加支払いなくプレイできるものもあるが、そうでないものもある。ゲーム機やPCがあればより快適にプレイできるのに、毎月お金を払うことに対して前向きになるゲーマーは少ないのが実情だ。
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