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「ボカロはあくまで楽器」 最新「VOCALOID6」にAI採用 人間の再現にこだわりすぎないヤマハの考え(2/3 ページ)

» 2022年10月21日 18時00分 公開
[谷井将人ITmedia]

新型VOCALOIDの変更点 人間の再現より使いやすさ重視か

 では、人間を再現するよりもクリエイターにとっての使いやすさを重視した結果、VOCALOID6はどのように変わったのか見てみよう。

 大きく変わったのは音楽制作ソフト(DAW)との連携方法だ。これまでは「ReWire」というシステムを使っていた。異なるソフト間で信号をやりとりする仕組みだが20年に開発終了している。VOCALOID6では連携の仕組みとしてARA(Audio Random Access)を採用。テンポの同期や再生・停止といった操作性が向上した。

 歌声の編集機能もVOCALOID:AIのエンジンに合わせて新たな操作系統を用意したという。これまではピッチを直接編集するのではなく「パラメーター」で間接的に補正するといった操作方法や、ワンクリックでピッチカーブのテンプレートを呼び出す方式を採用していた。

 VOCALOID6ではピッチの傾きを直接補正する方式を追加。筆者も触ってみたが、人間の歌声を補正するツールと似た操作感だった。

photo 人間の歌声を補正したことがある人の中には見覚えがある人もいるのではないか

 声のハリや息っぽさといった質感を変更する機能は従来バージョンから大きく減ったが、今後のアップデートで徐々に追加するとしている。

 筆者は他にもAI歌声合成ソフトを幾つか使っているが、VOCALOID6はその中でもかなり従順な印象がある。

 というのも、AIは勝手に人間らしく歌ってくれるが、勝手なことをするので思い通りになるとは限らない。ユーザーとAIの音楽的センスがずれると、むしろ表現したいものを表現できないこともある。長所と短所は表裏一体ともいえる。VOCALOID6はそこまで勝手ではなく、比較的指示を聞かせやすい。

 新たに登場した「VOCALO CHANGER」や「マルチリンガル機能」もクリエイターにとっては強力な味方になってくれる。

 VOCALO CHANGERはいわゆるボイスチェンジャーで、人間の歌声などをVOCALOIDキャラの声に変換する機能。合の手など明確な音階を持たず楽譜にしにくい音を簡単に再現できる。

自分の歌唱をまねさせる、トーク音声を作る、ボイスパーカッションをさせるなど活用アイデアはさまざま

 マルチリンガル機能は、日本語のキャラに英語や中国語を歌わせられる機能(中国語は後日対応)。言語の知識やテクニックがなくても、英単語などをそのまま入力するだけで適切な音声を生成できる。こうした機能がクリエイターの創作活動の自由度を上げてくれる。

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