ここ数年、歌声合成ソフト業界ではAIが大流行している。2020年以降発売されたソフトのほとんどがAIを活用した機能を搭載するほどだ。人間らしい歌声を簡単に作れる一方、機械的で“ボカロっぽい歌声”は若干苦手な部分もある。
10月13日に登場した「VOCALOID6」もAI歌声合成に対応した。そう聞くと「VOCALOIDも人間らしい歌声の再現に向かっていくのか」と思うかもしれない。取材に対し、ヤマハの吉田雅史さん(電子楽器開発部)は次のように返した。
「VOCALOIDはあくまでも楽器。人間を再現するよりも、クリエイターにとっての使いやすさを重視しています」(吉田さん)
VOCALOIDシリーズはおよそ4年ごとに新バージョンのリリースがある。今回も18年のVOCALOID5から4年での発売になった。
これまでは、事前に収録した音声を切り貼り・加工して歌声を作る「素片接続」という手法を採用していたが、今回新たにAIを活用した手法を追加した。楽譜を入力すれば自動でビブラートやしゃくりあげといった“味付け”がされた歌声を生成してくれる。AIをどのように使っているかは企業秘密とのことだった。
VOCALOIDでAIというと、19年の「AI美空ひばり」を思い出す人もいるかもしれない。美空ひばりさんの歌声を再現する企画で賛否両論を巻き起こした。
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この企画で使ったのが「VOCALOID:AI」という技術だ。VOCALOID6のエンジンも同じ名前だが、AI美空ひばりで使ったものとは中身が異なるという。
「AI美空ひばりの企画では、美空ひばりさんの歌声を正確に再現することが目的でしたが、VOCALOID6は“中の人”の声を再現するのが目的ではありません」
エンジンの内容は導入するハードウェアやOS、目的に合わせて都度チューニングしているという。
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