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楽天モバイルの我は通るのか? プラチナバンド争奪戦の行方新連載 房野麻子「モバイル新時代」(1/2 ページ)

» 2022年10月31日 11時23分 公開
[房野麻子ITmedia]

 総務省が、携帯電話向け周波数の再割り当てを円滑に行うため設置した「携帯電話用周波数の再割当てに係る円滑な移行に関するタスクフォース」。ここで大きな論点となっているのが、プラチナバンドを求める楽天モバイルだ。

 既存キャリア3社が保有するプラチナバンドの無償割譲を求める楽天モバイルだが、当然ドコモ、KDDI、ソフトバンクの反発は大きい。これまでの状況をまとめるとともに、10月21日に行われたタスクフォースの第14回会合での最新アップデートをお届けする。

楽天モバイルの三木谷浩史会長(5月13日の会見時)

楽天モバイルと既存3社の見解に大きな相違

 これまで楽天モバイルは、電波政策懇談会において「プラチナバンド」(700M〜900MHz帯の周波数)を求めてきた。これまでのタスクフォースの会合では、楽天モバイルが大手3社のプラチナバンドから「5MHz幅×2」ずつの割譲を要望。また、再割当ての認定から既存免許人が周波数を明け渡すまでの「移行期間」は最長10年としているが、楽天モバイルは1年を希望し、さらに移行にかかる費用も負担しないことを希望している。

楽天モバイルは既存3社のプラチナバンドから「5MHz幅×2」ずつの割譲を要望。それが叶わない場合は「1社か2社にロックオンして」(楽天モバイル 矢澤社長)割当てを求めるという。(第10回会合 楽天モバイルの資料より)

 プラチナバンドを楽天モバイルに割り当てること、そのことに関しては既存キャリアも反対してはいない。ただ、隣り合った帯域を使用する場合、電波の干渉を防ぐために、既存3キャリアは基地局に電波干渉を防ぐフィルタを挿入することが必要だと主張している。一方、楽天モバイルはフィルタ不要との立場だ。

 また、既存3キャリアは、周波数の帯域幅が変わることによって、電波の届きにくい場所に設置しているレピータも交換が必要になるとしている。3キャリアは、それらフィルタやレピータの設置・交換に10年程度、費用に1000億円前後かかり、費用は新たに周波数を使う事業者、つまり楽天モバイルが負担すべきとしている。このように、楽天モバイルと既存3キャリアの意見は対立してきた。

既存3社が必要としている基地局の受信フィルタ(第14回会合 総務省の資料より)

 なお、新たに周波数を使う事業者が費用を負担することにより、基地局設置を前倒しできる「終了促進措置」という仕組みがあるが、楽天モバイルはこの仕組みを利用しないとしている。楽天モバイルの矢澤俊介社長は第10回会合で、「3社は(プラチナバンドの活用ですでに)大きな利益を上げている。いわゆる既得権益の世界に入ってきていると思う。制度的にも全くおかしな話で、1ミリも納得できるものではない」と強い口調で語っていた。

 その一方で楽天モバイルは、基地局展開を進める地域を分けて、段階的に移行する方法を譲歩案として提示してもいる。とはいえ費用は負担しないとの考えは変わらない。

移行費用負担に関する各事業者の意見
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